うつ病患者の数は近年増加傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、平成8年には43.8万人だった患者数が平成20年には104.1万人と12年間で2.4倍に増加しました。
これはうつ病が決して珍しい病気ではなく、とても身近で誰でも罹る可能性があることを示しています。
特に社会人の場合は、仕事の人間関係や仕事内容が原因でうつ病になってしまう人が多いようです。
そして、うつ病がきっかけとなり、仕事を休職や退職する人も多くいるでしょう。
うつ病は身体からの「休みなさい」というサインです。
うつ病の原因が仕事の場合は尚更です。
うつ病になってしまったことをネガティブに捉える必要はありません。
むしろ、身体をしっかり休め、自分自身と向き合う良い機会なのです。
仕事から離れている時間をどのように過ごすかで、その後上手く仕事復帰できるかが大きく変ってきます。
間違った時間の過ごし方をすると、いつまで経ってもうつ症状が改善しなかったり、再発を繰り返すことになります。
今回はうつ病から仕事復帰するまでの正しい道のりを3ステップに分けて紹介します。
ステップ1 心の底から休む
まず、一番始めに必要ななことは「しっかり休む」ということです。
そんなの当たり前じゃないかと思う方もいるかもしれませんが、正しく休むことができていない人が非常に多いのです。
休むとは、ただ家で何もせずにゴロゴロ寝ていることではありません。
心療内科などで処方された薬を飲み、安静にしていればうつ病は良くなると思われがちですが、これは大きな勘違いです。
このことは私が身をもって体験しています。
医師から出された薬を服用し、なるべくストレスを溜めないようにと家の中でただぼーっとしていたら、体調は良くなるどころか、うつ症状は悪化したのです。
その当時の心境を思い返してみると、何もしていない時間というのは、不安や恐怖、自責の念など様々なネガティブな感情に襲われていました。
つまり、休んでいるように見えて、全く休めていなかったのです。
どうやら人間は忙しすぎてもストレスになるし、暇すぎてもストレスになるようです。
では、本当の意味での「休む」、心の底から休むとはどのような状態なのでしょうか?
その答えは「安心、安全」にあります。
心の底から安心、安全を感じることができれば身体は自然と回復していきます。
そもそも、安心安全とはほど遠い環境に居続けたせいで、身体は自らを守ろうと「うつ」という症状を発し、強制的に休ませようとしているのです。
しかし、職場という環境から逃げたとしても、安心安全を感じられなければ、心身は本当の意味で休むことできず、一向に回復を望むことはできません。
安全な環境を確保し、安心できる人達と時間を共にすることがうつ症状を緩和する第一歩です。
そして、どんなことがあっても自分を責めないことが大切です。
もし、自分を攻撃してくる人が近くにいたら、その人とは距離を置くことです。
たとえ、それが家族であってもです。
まず、心の底から安らぎを感じることができる環境を追い求めてください。
安心、安全を感じ、身体が自然にリラックスする感覚を思い出すのです。
ステップ2 自分と向き合う
仕事を休職や退職している時間はうつ病に苦しんでいる人にとってどのような意味があるのでしょうか。
私が一番伝えたいことは、自分自身ととことん向き合って欲しいということです。
しっかり休養して、職場復帰に向けた準備をすることも大切ですが、自分と向き合って、心の奥底に眠っている葛藤を克服することが何よりも重要です。
この作業なしに職場復帰してしまうと、再発の確立が上がってしまいます。
ステップ2では自分と向き合う方法について紹介します。
マインドフルネス瞑想
うつ病を克服するためには自分の体の中で何が起こっているのかを知らなければいけません。
そのために最も有効な方法がマインドフルネス瞑想です。
瞑想によって自分の本当の感情をくみ取る訓練をするのです。
それと同時に、今までいかに自分の気持ちを無視して、身体に無理をさせていたのかに気付くはずです。
うつ病は自分の心身からのメッセージを無視し、突き進んでしまった結果なのではないでしょうか。
仕事から距離を置いている時間を、瞑想によって自分の内面としっかり向き合う時間に当てましょう。
マインドフルネス瞑想のやり方はとても簡単で、静かな場所で目を閉じて、自分の感覚に集中し、ただ感じることだけを意識するだけです。
その感覚に余計な判断を下してはいけません。
まず、自分が今どのような感覚を感じているか、気づくことから始めるのです。
自分の感覚(苛立ちや、心配、不安、憂鬱)に気づきさえすれば、物の見方を変えやすくなります。
私が実践していたマインドフルネス瞑想のやり方を簡単に紹介します。
1,落ち着ける部屋で椅子または地面に座る
背筋は伸ばし、正しい姿勢を意識しましょう。寝転んで行っても良いですが、寝てしまう可能性が高いため、座ることをお勧めします。
2,軽く目を閉じ、ゆっくりと呼吸する
全身の力を抜くことを意識しましょう。無意識に肩などに力が入っていることが多いです。体のどの部分が緊張しているかを感じ、リラックスしましょう。
3,呼吸に意識を集中させ、「今この瞬間」を感じる
深い呼吸を意識します。鼻から大きく息を吸って、お腹を膨らませ、ゆっくりと息を吐きましょう。実際にやってみるとわかりますが、瞑想中に様々な雑念が脳裏に浮かんでくると思います。それが普通なので気にしなくて大丈夫です。その雑念に反応せずに、ただ感じることに意識しましょう。反応してしまうと「今この瞬間」から過去や未来に簡単に放り出されてしまいます。雑念を遠くから眺めるイメージです。少し時間がたつとその雑念が小さくなっていくのを感じるので、また意識を呼吸に集中させます。
マインドフルネス瞑想はこれの繰り返しです。
最初の内は雑念に圧倒されて、失敗してしまうこともありましたが、継続していくと、少しずつ慣れていきます。
焦らずじっくり取り組みましょう。
瞑想によって内面に意識を向け、 自分の本当の感情に気づくことができれば習慣的な反応ではない、新しい選択肢を得ることができるかもしれません。
そして自分自身が向き合わなければいけない、心の奥底に眠る葛藤が見えてくるはずです。
潜在意識の本音を見つるワーク
あなたがうつ状態になっているとしたら、それは人生の進むべき方向を間違えてしまったのかもしれません。
同じ道でも、人によって平気な人もいれば、うつ病になるほど辛い思いをする人もいます。
間違った道を無理して、必死になって歩んだ結果、心に大きな傷を負ってしまったのではないでしょうか。
仕事を休んでいる今こそ、自分の本音を見つけ、正しい道に方向修正しなければいけません。
潜在意識の本音を見つける簡単なワークを紹介します。
紙とペンがあれば誰でもできるので、興味がある人はやってみてください。
①あなたにとって最も解消したい「○○したいけど○○できない」という葛藤を用意する。
あなたの潜在意識の本音をあぶり出すたった一つの質問があります。
それは「○○したいけど○○できない」と言う言葉にあなたの思いを込めて言語化することです。
今強くストレスを感じていることを意識して、○○したいけど○○できないという言葉を作ってみてください。
例えば「人の目を見て話したいけど、人の目を見て話すことができない」のように。
葛藤とは本音と建前が、お互いアクセルとブレーキになり真逆に引っ張り合っている状態です。
このワークによって自分の本音も建前も両方を認めてあげることができます。
②二つの質問事項を作る
①で作成したテーマから「なぜ、○○したいのか?」 「なぜ、○○できないのか?」 この2つの質問事項を作ります。
例えば「人の目を見て話したいけど、人の目を見て話すことができない」 というテーマを作ったのなら 「なぜ、 人の目を見て話したいのか?」 「なぜ、人の目を見て話すことができないのか?」となります。
これは、これは潜在意識と表面上の建前の両方を思いをあぶり出すためです。
③2つの質問事項を「なぜ?」と「どうなりたい?」で掘り下げて、潜在意識の本音を探る。
②で作成した「なぜ、○○したいのか?」 「なぜ、○○できないのか?」のそれぞれに対して「なぜ?」の質問を繰り返します。
「なぜ?」という質問に対して出た答えを「〜だから」で統⼀すると、さらに「なぜ?」の質問で連鎖させやすくなります。
「なぜ?」を繰り返していく中で「なぜ?」ではつなげにくい場合は「どうなりたい?」に質問を変えてください。
そして答えが出たら、さらにその答えに対して再び「なぜ?」と質問を繰り返していくことで、さらに掘り下げていきます。
そして、最後は「どうなりたい?」の質問で締めくり、潜在意識の本音を見つけ出してください。
こつは深く考えず、頭に浮かんだ言葉をそのまま繋げていくことです。
下に私のワークの例を記しますので参考にしてください。
ちなみにステップ1の瞑想と同時に行うと、より深い部分まで到達できます。
私のワーク例
- 心の葛藤を言語化する
「自分の意見をはっきり言いたいけど、はっきり言えない。」
- 言語化した言葉から二つの質問を作る
「なぜ自分の意見をはっきり言いたいのか?」
「なぜ自分の意見をはっきり言えないのか?」
- 二つの質問に対して 「なぜ?」と「どうなりたい?」で掘り下げる
なぜ自分の意見をはっきり言いたいのか?
自信があるように見えるから(なぜ?)余裕があるように見られたいから(なぜ?)おどおどしたところを見られたくないから(なぜ?)カッコ悪いから(なぜ?)自信がないように見えるから(どうなりたい?)堂々としたい(なぜ?)過去が原因で人前で堂々とできないから(なぜ?)メンタルブロックがあるから(なぜ?)人の顔色をうかがいながら生きてきたから(なぜ?)・・・(どうなりたい?)どんな自分もどんな相手も認めたい。
なぜ自分の意見をはっきり言えないのか?
否定されるのが怖いから(なぜ?)だめな部分を見られるのが怖いから(なぜ?)評価が下がるから(なぜ?)自分には価値がないから(なぜ?)人からバカにされることが多いから(なぜ?)気が弱いから(なぜ?)自分の意見をはっきり言えないから(なぜ?)恥ずかしいから(なぜ?)ダメな自分を見られるのが怖いから(なぜ?)自尊心が傷つくから・・・(どうなりたい?)周りから影響されず、自分の好きなことに没頭したい
このように「なぜ?」「どうなりたい?」の質問を繰り返すことで自分の潜在意識の本音を見つけ出すことができます。
これは今後の人生を歩む上で非常に大切な道しるべになります。
私の場合はこのワークで私はこのワークのおかげで、「どんな自分もどんな相手も認めたい」「 周りから影響されず、自分の好きなことに没頭したい 」 という自分の中に眠っていた本音を導き出すことができました。
また、今までは自分も他人もどちらも否定しながら生きていたことに気づいたのです。
そして、その原因は子どもの頃に親に認めてもらえなかったということにも気づくことかできました。
導き出された言葉を参考に仕事に対する考え方を修正すると同時に、幼い頃の葛藤を癒し、他人も自分も受け入れる事で人生が大きく変わりました。
皆さんもこのワークを活用し、自分の進むべき道を見つけてください。
ステップ3 専門の訓練を受ける
ステップ1,2で仕事復帰に向けた下準備は整いました。
最後に社会復帰に向けた実践的なトレーニングを行う必要があります。
具体的には自分のストレスマネジメントや認知行動療法、アンガーマネジメント、ビジネスコミュニケーションスキルや対人コミュニケーションスキルなどです。
しかし、このような訓練を自分で行うのは非常に難しいです。
社会復帰に必要なスキルや訓練をまとめて身につけることがせきる専門の支援があることを知っていますか?
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「独りではないのだ」という安心感と「自分にもできることがある」という自信を取り戻すことができるでしょう。
また、就職活動や就職後のサポートまで幅広く支援を受けることができます。
働くことより、働き続けることに重点を置いているので、仕事が長続きしない人にも効果がありそうです。
半数以上の人が無料で利用することができるので、仕事復帰に不安がある方は是非利用してみてください。
まとめ
うつ病の症状は人それぞれで、回復に向けた取り組みもそれぞれ違います。
思うようにうつ症状が良くならず、不安に感じている人もいるかもしれませんが、焦る必要はありません。
一つ言えることは、うつ病で休んでいる期間は決して無駄ではないということです。
休んでいる間に自分が何をするかが大切なのです。
今回紹介した3ステップを参考にしてスムーズな職場復帰を目指してください。