ソマティックエクスペリエンスのやり方を簡単解説、誰でもできる7ステップ

ソマティックエクスペリエンス

今回はソマティックエクスペリエンス(SE)を用いたトラウマ克服方法を解説していきたいと思います。

ソマティックエクスペリエンスとは直訳すると「身体の経験」という意味です。


この方法は従来の心にアプローチする方法ではなく、自分の身体にアプローチする方法で安全かつ自然に心身の回復力を高めることができます。

はっきり言って、トラウマを克服するためには薬物療法やカウンセリングだけでは足りません。

表面に現れる症状を治療する対症療法ではなく、身体の奥深くに眠ってる潜在的なトラウマに目を向けるのです。

自分の身体が本当の安心を感じることができなければ、いつまでたっても根本的な解決は難しいです。

私自身もこのSEのおかげで長年苦しんできた心身の不調から脱することができました。

心に焦点を当てる治療で上手くいかない場合、身体に焦点を当てる治療に変えていく必要があるのです。

SEを用いたトラウマ克服方法を、誰でも理解できるように7つのステップに分けて簡単に紹介したいと思います。

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1、参考にした書籍について

今回参考にした書籍は身体に閉じ込められた身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアという本です。

この本はソマティック・エクスペリエンスの創始者でもあるピーター・A・ラビーン先生が書かれており、トラウマの本質からSEを用いた治療法まで丁寧に解説されています。

私自身トラウマの治療方法を長年模索していく中でたどり着いた答えがSEでした。

この本は私に一筋の光を与えてくれ、進むべき方向の地図となってくれました。

一部難しい内容もありますが、トラウマを克服したい人にとっては非常に深い内容になっています。

2、ソマティックエクスペリエンスを用いたトラウマ克服7ステップ

ステップ1 身体の中に安全基地を確保する

身体の中に安全基地を確保することはトラウマを克服するにあたって最も重要だと思います。

安全基地とは言い換えれば安心の感覚のことです。

まず、自分の身体の中に眠っている安心の感覚を呼び起さなければいけません。

恵まれた環境で育った人であれば、親からの愛情が安心の感覚として安全基地の役割を果たすでしょう。

一方で過酷な環境で育った人にとって、安心の感覚を見つけることは簡単なことではありません。

しかし、どれだけ過酷な環境で育ってきた人であっても、心地よい体験の記憶を持っているはずです。

親から安心を得られなかった人でも、例えば兄弟や友人、学校の先生などに心地よい感覚を持っている場合もあります。

兄弟や友人と無邪気に遊んだ記憶や学校の先生に褒められて嬉しかった感覚が身体のどこかに残っているかもしれません。

子供がいる人は自分の子供を抱きしめている感覚が安全基地になる場合もあります。

ゆっくりでいいので子供のころの記憶を中心に過去の安心できる感覚を探ってみましょう。

体の中に安全基地を確保できればトラウマによる不快な感情(恐怖、怒り、無力感、麻痺など)に圧倒されそうになってもその中に逃げることができます。

安心できる感覚を思い出すことで不快な感情を和らげることができるのです。

あなたの安全基地は誰も攻撃することができません。

逆に言うと安全基地を持たずにトラウマと向き合うことは非常に危険で無防備で強い相手と戦うようなものなのです。

多くの人が安全基地を認識しないまま、トラウマと向き合おうとするため、より深い傷を負ってしまったり、再トラウマ化したり、より強固の傷跡を残すことになるのです。

安全基地を見つけることができない場合はどうするか?

長期にわたり過酷な環境に身を置き、あまりにも不快な感覚になれてしまっている人は安心した心地よい感覚が見つけられないかもしれません。

安心できる感覚なんて自分の中にあるはずがないと思ってしまうでしょう。

しかし、人間は何かしらの心の支えがないと生きていけないのです。

どれほどひどい体験をした人でも、今まで生きてこられたということは何かを心の拠り所にしていたのです。

私も、見つけることが難しいと思っていた安全基地を発見することができました。

私の経験が参考になるかもしれないので紹介します。

私は学生時代に長期にわたりいじめを受けていました。
当時の私の状況は学校に行けばクラスメイトに精神的にも肉体的にも傷つけられて、家に帰れば母親から責められて、最後に自分で自分を責めるという生活を送っていました。
もちろん心を開ける友人もいませんでした。
このような状態で私はどのように生き延びてきたのでしょうか。
当時は何も頼るものがないと感じていましたが、今になって当時を振り返り、記憶を探ってみると、2つの穏やかな記憶を感じることができました。
1つ目は朝学校に行く際、いつも笑顔で「いってらっしゃい」といってくれるお婆さんです。
その人の笑顔はなぜか信頼でき、学校に行く恐怖を少しだけ和らげてくれました。
2つ目は当時実家で飼っていた犬のタローです。
タローはいつも私に近寄ってきてくれて、タローの頭を撫でているときは心が少し落ち着いたのです。これこそが私の心の安全基地なのです。
大したことはない出来事ですが、確かに心の支えになっていたのです。
そして今でもその記憶を思い出すと、心は穏やかになるのです。
トラウマによる不快な感情に圧倒されそうになった時、その記憶を呼び起こし、穏やかな感情を感じることでしかトラウマには対抗できないのです。
身近に信頼できる人がいなかったとしても、私のように全く関係のない近所の人や、人以外の動物や植物でさえも安全基地になり得るのです。
穏やかさを感じることができる記憶を探してみてください。

ステップ2 自分の感覚を認識し、受け止める訓練をする

トラウマを受けた人は、自分自身をコントロールすることが難しいはずです。

自分をコントロールするためには自己調節力を持ち、自己の内部感覚を認識し、受容しなければいけません。

しかし、準備が不十分だと未知の脅威に圧倒されトラウマによる傷がより深くなってしまいます。

トラウマに圧倒されないためにも、ステップ1で述べたように自分の中に安全基地を確保しておく事が大切なのです。

トラウマを負った人は自分の身体が敵となってしまっていて、あらゆる感覚が恐怖や無力感の前兆として解釈されてしまいます。

そして、恐怖や無力感を感じること自体に恐れを抱いているため、自分の感覚を感じることを避ける傾向にあります。

この複雑な状態を解決するためには快と不快、愉快と不愉快などあらゆる感覚に対する耐性を育む自信を獲得する必要があります。

私たちは生きているとどうしても、ポジティブな気持ちやネガティブな気持ちといった二元論的な区別をしてしまいますが、あらゆる感情が自分のとって大切な気持ちなのだと認めなければいけません。

認めたくない感覚(特に怒りや無力感)を意識的に許容するのです。

ネガティブな感情に圧倒されそうになったら、ステップ1で見つけた安全基地を思い出してください。

恐怖や無力感などの感情と安全基地で見つけた心地よい感情の相反する状態を振り子のように行ったり来たりすることで、次第に恐怖の支配が減少していきます。

恐怖や抵抗、無力感といった不快な感覚から、安全基地の快の感覚に意識的に移動することで主体性を取り戻すこともできます。

これにより希望が見いだされ、トラウマ治療という道を進む原動力となるのです。

ステップ3 ペンデュレーションの持つ力を利用する

ペンデュレーションとは振り子のように行ったり来たりするリズムのことです。

トラウマを負った人は自分の不快な感情(恐怖や不安など)は不変のものだと感じてしまいます。

しかし、ステップ2の方法で自分の感情に意識を集中させると、感情は少しずつ変化することを理解できるはずです。

そして、不快な感情が変化しうることを知ることで、トラウマにより凍り付いている身体を溶かしていくことができます。

ステップ1で見つけた安全基地とステップ2で受容した不快な感情の間をペンデュレーションの技術を使って行ったり来たりする技術が大切なのです。

困難な感覚に対処するのに有効な方法は逆の感覚を発見することなのです。

私たちがトラウマによる影響により生活に支障が出る場合は、過覚醒状態(激し怒り、強烈な衝動)低覚醒状態(無力感、麻痺、シャットダウン)に陥り、自分をコントロールできなくなってしまう時でです。

過覚醒状態と低覚醒状態の間にある、自分で自分をコントロールできるリラックスした状態(耐性領域)に留まる訓練をしなければいけません。

耐性領域とはトラウマの嵐にも耐えられる状態です。

ペデュレーションの技術を用いて、過覚醒、耐性領域、低覚醒を行ったり来たりする中で徐々に耐性領域を広げ、自分をコントロールできる状態にするのです。

ペデュレーションを意識すれば、不変だと感じていた不快な感覚が、一時的なものであり、苦痛は永続しないことが解ります。

また、振り子のリズムを感じることが大切で、たとえひどい気分であってもその後必ず心地よい安心した感覚を手にすることができます。

以前は自分を圧倒していた不快な感覚も受容することができるようになり、それが変化することをペデュレーションによって知ることで苦痛から解放されるのです。

ステップ4 タイトレーション

トラウマの開放は少しずつ行わなければいけません。

私たちは気持ちの焦りに負けて、急激な回復を望んでしまいます。

しかし、急激なエネルギーの解放は非常に危険なのです。

ゆっくりと少しずつトラウマと向き合っていく過程を身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアの中でタイトレーションと言う言葉で表現しています。

タイトレーションとは化学実験に用いられる用語で本の中では塩酸と苛性ソーダの中和を例にしています。

単に二つを混ぜ合わせると、激しい爆発が起き、あなたも実験室の他の人たちも視界を失ってしまうだろう。しかし上手にガラス弁(栓)を用いれば、一方の物質をもう一方に一度に一滴ずつ加えることができる。一滴ごとに、[アルカセルツァー][訳注:水に溶かして飲む頭痛、胃の薬。溶かす際に発泡する。]のような発泡が起きるが、すぐに収まる。一滴ごとに、ほぼ同じ最小限の反応が繰り返される。

p.102

急激に混ぜ合わせると危険な物でも、一滴ずつ安全に混ぜ合わせれば、安全に中和することができるのです。

トラウマを負った人は、長期にわたり身体の中に負のエネルギーを溜め込んだ状態にあります。

この強烈なエネルギーを一気に開放することは、化学実験で言う爆発と同じ現象が起き、身体にとって逆効果になってしまいます。

タイトレーションという技術を用いることで安全にトラウマのエネルギーを解放できます。

少しずつトラウマと再交渉し、怒りや恐怖、不安と行った情動を爆発させることなく中和しなければいけないのです。

ステップ5 能動的反応を回復し、トラウマを過去の出来事にする

トラウマの治療には失われた本能的、能動的反応を回復することがもっとも重要です。

恐怖体験に対して戦うことも逃げることもできなかった場合、その出来事はトラウマとして身体の中に保存されるのです。

そして戦うか、逃げるかで使われるはずだった強烈なエネルギーが身体の中に残ったままになっています。

そのせいで、定期的にフラッシュバックに襲われ、いつまで経っても過去の出来事にならないのです。

私たちトラウマを負った人間はその恐怖体験の最中に本当はどうしたかったのかを知る必要があります。

私はいじめを受けているとき、戦うことも、逃げることも許されず、ただ耐えることしかできませんでした。

でも、本当はいじめてくる相手の顔を思いっきりぶん殴りたかったのです。

そして、利き腕の肩から拳にかけてエネルギーが保存されていることにも気づきました。

戦いたくても、戦うことができなかったエネルギーが体内にそのまま残されているのです。

この未解決のエネルギーを安全に解放しなければいけません。

私の場合だと、フラッシュバックによって過去の感情に圧倒されたときに、柔らかくて安全な物をいじめっ子に見立てて、思いっきりぶん殴りました。

これが本当に私がしたかった本能的、能動的反応だったのです。

以前はフラッシュバックに襲われても、当時と同じように耐えることしかできませんでした。

しかし、耐えることは能動的反応ではないため、トラウマがいつまで経っても過去の出来事になりません。

また、本当は逃げたかったのに逃げることができなかった人は、過去の出来事を思い出し、逃げることをイメージし全力で走ってみることも有効かもしれません。

このように能動的な自己防衛反応を完了させることで、無力な被害者でないこと、試練を乗り越えたことを学ぶのです。

そして恐怖がだんだんと減り、トラウマが過去の出来事になるのです。

ステップ6 身体を凍り付きから解きほぐす

戦うことも逃げることもできなかった場合、人間は最終手段として身体を麻痺させ、固まらせます。

この凍り付いた状態がトラウマなのです。

凍り付いた状態から、恐怖と無力感を分離することでトラウマによる長期的な衰弱を回避し、症状の治癒も可能になります。

今までのステップで恐怖や無力感を認識できたと思いますが、凍り付いた身体から恐怖や無力感を取り除いていくと自己調節機能が回復し、凍り付きの解きほぐしが起こります。

重要なことはその解きほぐしが急激に起きないようにすることです。

ステップ4で紹介したタイトレーションをしないと再トラウマ化しやすいからです。

私たちを凍り付きによる不動状態に陥れる恐怖は二つあります。

一つは不動状態に入る際の恐怖(麻痺、無力感、死に対する恐怖)不動状態から出る際の恐怖(激しい怒り)です。

この二つの恐怖に捕らわれると、それに対抗する手段がないように思えてしまいます。

しかし、ステップ5の能動的反応の回復により、不動状態の自然終息が起き、私たちは前に進む力を得ることができるのです。

この前に進む体験こそ私たちを恐怖や無力感の無限ループから救ってくれるのです。

タイトレーションにより安全に全身体験を積み重ねていくと、トラウマによる恐怖を上回る生き生きとしたエネルギーを獲得できるようになります。

ステップ7 今ここにある環境に意識を向ける

トラウマは現在ではなく過去に意識がある状態で、そのような状態では他者と適切に関わることが難しくなります。

しかし、ペンデュレーションやタイトレーションによって現在の感情を安全に受容することで、今ここにいる能力が回復するのです。

今ここにある環境に意識を向け、社会とのつながりを体現しなくてはいけません。

社会的つながりを持つことで、トラウマによる過覚醒や低覚醒を防衛する手段になります。

社会的な世界に携わることは、今ここに留まるだけでなく、所属と安全の感覚を感じることができるのです。

常に今ここを意識することで、トラウマの力は徐々に弱くなっていきます。

マインドフルネス瞑想やヨガなどの方法は今ここを意識するための有効な方法です。

まとめ

今回はSEを用いたトラウマ克服方法を7つのステップに分けて紹介しました。

注意点としてこの方法は劇的にトラウマを克服し急激に身体が回復するものではありません。

むしろそのような急激に回復するような方法は存在しないと考えています。

SEは人間が本来持っているレジリエンスを自然に回復させる方法です。

回復のスピードは非常にゆっくりで数日、数ヶ月ではなく数年先を見なくてはいけません。

日々の継続により少しずつ緩やかな坂を登っていくのです。

1日だけでは上に登ったかさえも解らないかもしれませんが、数年後にはいつの間にかなり高い位置に来ているかもしれません。

ゆっくりだからこそ安全にトラウマを解放できるのであって、長年トラウマに苦しめられている人ほど身体の凍り付きは頑固で急激に解きほぐす事は非常に危険なのです。

トラウマを発端に様々な精神疾患を患っている人の目標は日常生活を支障なく送ることだと思います。

SEを用いて身体にアプローチすることで薬物療法では得られなかった新たな体験を経験することになるでしょう。

身体が新たな体験を経験することでしか、新しい脳回路を作り出す方法はないのです。

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