芸術やクリエイティブな才能に、憧れることはありませんか?
調べてみると、創造性のある人には多くの特徴があるようです。
また、自閉症やADHDといった発達障害が創造的な才能の基盤となってなっていたり、HSPのような感受性の高さが想像力を高めていると考える人もいます。
今回は、創造的な人に見られる10の特徴について解説します。
また、その特徴からHSPの人と芸術性について考察してみたいと思います。
参考書籍
今回参考にした書籍は、心理学者であるミハイ・チクセントミハイの代表的な書籍、クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学です。
400ページを超えるボリュームのある濃い内容となっており、創造性について深く掘り下げることができます。
一部専門的な内容もありますが、私たち一般に向けた、創造的になるためのアドバイスも多く含まれいたので、非常に参考になりました。
芸術やクリエイティブな才能、創造性について興味のある方におすすめの一冊となっています。
創造的な人が持つ10の特徴
①エネルギッシュなのに落ち着いている
創造的な人の一つ目の特徴は、エネルギッシュでありながら、落ち着いてもいることです。
まず前提として、創造的な人がエネルギッシュであることは、だれもが異論なく認めるでしょう。
異常なほど多作、異常なほど論文が多い、信じられないほど多数の分野にまたがって活躍している、いつ寝ているのか疑問に思われるほど活動的など。
これらは、創造的な人たちが、まわりの人たちを驚かせる最もわかりやすい側面であり、同時に創造的な人だと認められる必須条件でもあります。
どれほどユニークなアイデアを持った人であっても、ほんのひとつの作品、ほんのひとつの論文を書くだけで、後世にわたって創造的な人と記憶されることはまずありません。
創造的な人が、抜きに出た業績を挙げたり、類まれなるアイデアを世に送り出したりできるのは、ひとえに、人の何倍も作品を作り、異例なほど多分野の知識に通じているからにほかなりません。
こうした人たちは、いったいいつ休んで、いつ寝ているのか?不思議に思ってしまいます。
クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学でチクセントミハイは、彼らは決して強靭なわけでも、人の何倍もの体力があるわけではない、という矛盾するような特徴を浮きらかにしています。
このことは、創造的な人々が異常なほど活動的であり、いつも「オン」の状態で、常に忙しく動き回っていることを意味してはいない。実際彼らは頻繁に休みをとり、よく眠る。重要なことはエネルギーが彼らの制御下にあるということである―カレンダー、時計、あるいは、外的なスケジュールによって制御されることなく。
p.66
創造的な人たちは、極めてエネルギッシュに活動しているように見えて、実際には、人よりもよく眠り、休息を多めにとっています。
アインシュタインが10時間以上寝るロングスリーパーだったことはよく知られていますが、長時間寝る人のほうが繊細で感受性が強いという研究者もいます。
鋭敏な感覚のせいで受けとる情報が多く、睡眠中の記憶の処理にも時間がかかるのかもしれません。
さらに、チクセントミハイは、創造的な人たちは、幼少期は虚弱体質だったり、病気がちだったりすることも多い、と指摘しています。
極めて創造的な人たちは、必ずしも、頑強な肉体に恵まれたおかげで、多作で活動的になれたわけではない、ということです。
むしろ、創造的な人たちは、本来、神経が高ぶりやすく、疲れやすい傾向を持っているように思われます。
そのため、人生の初期には、通常の学校生活や社会生活にうまくなじめないこともあります。
しかし彼らは、人生の早い時期に、自分の特殊な体質と折り合いをつける生活リズムを見いだすようです。
チクセントミハイが言うように、それは「カレンダー、時計、あるいは、外的なスケジュールによって制御されることなく」、それぞれの体質に合った独特のリズムです。
創造的な人の中には夜型の人もいれば、朝型の人もいます。
しかし、共通していえるのは、それぞれが、自分に合ったリズムを見つけ、周りの人たちがなんと言おうと、そのリズムを固守して活動することです。
もともとすこぶる健康だというわけではなくても、自分の体質に合った生活のリズムを身に着けた結果、落ち着いた環境で「集中した精神状態」を活かせるようになり、他の人より少ない時間でも、より多くのアイデアを形にすることができるのでしょう。
②トップダウン思考でありながらボトムアップ思考
創造的な人の二つ目の特徴は、頭脳明晰でありながら単純でもある、ということです。
これもまた、創造的な人たちのイメージとして、馴染みのあるものかもしれません。
極めて創造的な人たちは、カミソリのように鋭い推理や論理を展開しますが、同時に、茶目っ気あふれるユーモアも持ち合わせています。
もとより頭がやわらかくなければ、偉大な業績は残せません。
特定の理論に固執したり、人の意見に耳を傾けなかったりしたら、先人たちに勝るアイデアは得られません。
しばしば、アニメやドラマに出てくる、天才の肩書きといえば、「IQ200の…」といった紋切り型ですが、チクセントミハイによると、創造的な人の頭のやわらかさは、IQでは測れません。
心理学者、ルイス・ターマンによって1921年にスタンフォード大学で開始された「優れた知能」についての最初の縦断的調査は、非常に高いIQの子どもたちは人生で成功するが、ある特定の段階を過ぎると、IQはもはや実生活における優れた業績と相関関係を示さなくなるらしいことを、かなり決定的に示した。その後の研究は、IQ120あたりにその限界点があることを示唆している。つまり、120より低いIQでは創造的な仕事は難しいかもしれないが、IQが120を超えても、その数値の増加がより高度な創造性を伴うとは限らないということなのである。
p.68
創造的な仕事には、IQ120ほどの明晰さは必要ですが、それ以上IQが高くなっても、より創造性が高まるということはありません。
それどころか、チクセントミハイは、IQが高くなりすぎると、創造性が低下する可能性があるとも指摘しています。
IQが極めて高い人たちは、尊大になって社交性を欠いたり、現状に満足したりすることがあるからです。
創造的な人は、頭脳明晰でありながら、過度に賢すぎないがために、さまざまな人の意見に耳を傾けたり、質問したり、先入観にまどわされずに熱心に調査したりできるのかもしれません。
IQテストは、緻密に論理的に思考する能力(ボトムアップ型の収束的思考)を計測しますが、創造的な人はそれと正反対のトップダウン型の拡散的思考、つまり突飛に思える連想や、ばからしく思えるようなアイデアを思いつく能力にも秀でています。
チクセントミハイは、創造性には、収束的思考と拡散的思考のどちらが欠けても不十分であり、創造的な人は拡散的思考でさまざまなアイデアを思いつくと同時に、収束的思考によってアイデアの良し悪しを選別していると述べています。
③真面目なのに遊び好き
創造的な人の三つ目の特徴は、遊び心と自制心を両方持ち合わせていて、責任感がありながら、無責任でもあることです。
すでに見たとおり、創造的な人は、融通が利かない頑固な人ではなく、柔軟でユーモラスです。
しゃにむに働きつづけ、定年後になんの趣味もないとこぼす企業戦士のような人ではなく、仕事に打ち込みながらも、楽しみを欠かしません。
創造的であるためには、真面目すぎても、遊び好きすぎてもいけません。
だれよりも真面目に学問や創作に打ち込んでいながら、同時にだれよりもはっちゃけて遊びにふける一面も持っています。
遊び心があって、子どものような旺盛な好奇心で楽しいことに手を出してまわることは、多彩なアイデアを生み出す拡散的思考の源泉になります。
しかし、ただ遊びほうけているだけでは、何も成し遂げられず、現実ばなれしたことばかり言う夢想家として終わってしまいます。
現実ばなれしたアイデアを思いついたら、すぐさま思考を切り替えて真剣に取り組み、いかにしてそれを実現できるか、だれよりも真面目に考えます。
やるべきときにはきっちり自制心を働かせて、辛抱強くコツコツと仕事に取り組めるからこそ、創造的な人は確かな実績を残すことができるのです。
④ロマンチストでありながらリアリスト
創造的な人の四つ目の特徴は、夢想家でありながら現実主義者でもあるということです。
これまでの点とも大いに関係しますが、創造的な人は、空想にふけって大胆なアイデアをたくさん思いつきますが、それを実現するために現実的な計画を練ります。
興味深いことに、創造的な実績のある人と、そうでない普通の人を対象に、インクのしみのような絵から自由に連想させるロールシャッハテスト(雲の形からいろいろ連想するのと同じで「パレイドリア」と言われる)をさせると、両者では、不思議な違いが見られるそうです。
クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学の中で次のように書かれています。
これらの検査では、インクのシミや絵など、ほとんど何にでも見える曖昧な刺激について、ひとつの物語を作ることが要求される。より創造的な芸術家たちは、まったく独創的な回答を返し、その回答は、非日常的で、色彩豊かな細かい要素まで彩られていた。しかし、一般の人々が時々するような「奇異」な回答は決してしなかった。奇異な回答とは、どう好意的に見ても、その刺激のなかに決して見出せないようなものである。…彼らが見出す斬新さは現実に根ざしているのである。
p.72
創造的な人は独創的で豊かな連想能力を発揮しますが、必ず、なぜそう連想したかを説明することができます。
つまり、創造的な人の突拍子もなく思えるアイデアは、実は地に根ざした堅実なもので、豊富な知識と経験に裏打ちされています。
創造的な人たちのアイデアは、あまりに突拍子もないように見えるため、「天才と狂気は紙一重」などと言われますが、実は並外れて広い見識と豊富な経験、ふつうの何倍も深く掘り下げる思考とが融合した現実的なアイデアなのです。
⑤外向型人間であり内向型人間でもある
創造的な人の五つ目の特徴は、外向的でありながら内向的でもある、ということです。
一般に、世の中の人は、内向型人間か、外向型人間のどちらかである、と分類されがちです。
外向的でコミュニケーションが得意な人が社会で重宝される一方、近年では内向型人間の強みを解説する本も書店にたくさん並ぶようになりました。
しかし、創造的な人たちは、この点においても、どちらにも当てはまるような複雑な人格を有しています。
通常、私たち一人ひとりは、群衆の真っただ中にいることを好むか、あるいは束の間のショーを傍観者として座ってみるかの、どちらか一方の傾向を示す。実際、現在の心理学では、外向性と内向性は、人々を互いに区別し、確実に測定できるもっとも安定した性格特性であると考えられている。しかし一方で、創造的な人々は両方の特性を同時に表すように見えるのである。
p.74
「孤高の天才」という言葉が示すように、創造的な作家や学者はしばしば部屋にこもってひたすら創作や研究に打ち込んでいるというイメージがつきものです。
それゆえ内向型人間の強みは、繊細さや独創性だと言われています。
しかし、本当に典型的な内向型人間が、はたしてあれほど多くの作品を発表したり、斬新なアイデアを声高に主張したりするでしょうか。
創造的な人は、社会で広く受け入れられている概念に真っ向から挑戦し、常識を覆すからこそ創造的なのです。
一人になって孤独な仕事に打ち込む時間が大好きですが、同時に他の人と意見を戦わせ、見識を深めるのもまた大好きです。
創造的な人は、孤高の天才であると同時に、その創造的な仕事によって、さまざまな分野の人たちをつなぐ架け橋となり、新しい組織や学問、企業を立ち上げる、文化のネットワークハブのような役割を果たすのです。
⑥謙虚に学び、自信たっぷりに発表する
創造的な人の六つ目の特徴は、謙虚であると同時に傲慢であるということです。
謙虚でありながら傲慢とは、これまで見てきた複雑な両極性の中でも、特に矛盾しているように思えますが、実在の人物の例を見れば、それほど珍しいことではありません。
たとえばアイザック・ニュートンは、自分の業績がロバート・フックら先人たちの洞察に基づいていることを謙遜に認め、「わたしがはるか遠くを見渡せたのはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからだ」と述べました。
しかし、その同じニュートンは、微分法の発見を自分の手柄とするために、先に発表していたライプニッツを狡猾におとしめました。
先人たちの研究を認める謙遜さは、創造的な人に不可欠です。
まず前提として、先人の研究や作品をしっかり調べて知識と技術を学ばなければ、自分のアイデアを形にして世に送り出すことは不可能でしょう。
しかし、先人たちが積み重ねた業績に不十分なものがあると確信し、斬新なアイデアを主張するためには、自分のアイデアのほうが勝っているはずだ、という自信なしには、やはり不可能でしょう。
創造的な人たちは、自分の限界を認め、まだまだ知るべきことがたくさんあるのを知っているので、柔軟に他の人の意見に耳を傾けます。
しかし、同時に、自分の成し遂げたことにも相当の自信を持っていて、唯一無二のものだと自負しているからこそ、アグレッシブに切り込んでいけるのです。
⑦文化のバイアスに影響されず、女性的かつ男性的
創造的な人の七つ目の特徴は、男性的でありながら女性的でもある、ということです。
誤解を招きやすい点ですが、これは、創造的な人が中性的である、という意味ではありません。
すでに見たように、創造的な人とは、平均や中間点ではなく、両極端が同時に存在していることです。
また、創造的な男女は同性愛の傾向が強いという意味でもありません。
創造的な人の中には同性愛者もいますが、大部分はごく普通の異性愛者で、結婚して子どもも設けています。
クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学の中では次のように表現されています。
この両性具有的な傾向は、時折、純粋に性的な観点から理解され、その結果、同性愛と混同されてしまう。しかし、心理的な両性具有性はより広い概念であり、ジェンダーとは関係なく、攻撃的であると同時に慈しみ深く、繊細であると同時に厳格であり、支配的であると同時に従順であり得るという、一人の人間の能力を意味する。心理的に両性具有的な人は、事実上、自分の反応のレパートリーを倍増させ、世界との交流においては、より豊かで多様な見方で好機に対処できるのである。したがって、創造的な人々が、自分のジェンダーの長所ばかりでなく、もう一方のジェンダーの長所を持つ傾向にあったとしても、それは驚くことではない。
p.80
そもそも、創造的な人が男性的でもあり女性的でもあるとは、生物学的な性ではなくジェンダー(文化的な性)と関係しています。
女性とは繊細でおしとやかなものだ、男性とは勇敢でたくましいものだ、といった認識があるとすれば、それは生物学的なつくりではなく、生まれ育った文化や育てられた方によって、そうなっていくにすぎません。
つまり、チクセントミハイは、文化の影響の一例として、男性的、女性的という表現を用いてはいますが、彼が言いたいのは、創造的な人たちは、自分が生まれ育った社会に存在している根深い先入観に捕らわれず、自由に自己表現できるということ。
地域社会に根づいた目に見えない因習や偏見、ルールといったバイアスに影響されて思考停止してしまうのではなく、自分で考え、判断しながら、周囲に迎合しない生き方を貫けるからこそ、男性らしさと 女性らしさの両方を発揮できるのです。
⑧空気を読むことも読まないこともできる
創造的な人の八つ目の特徴は、独立心に富んでいながら、従順でもあるということです。
これは6番目で見た謙虚でありながら自信過剰ということ、また7番目で見た文化の影響を受けすぎず自分で決定できることと共通しています。
言うなれば、創造的な人は、「空気を読む」こともできれば、「あえて空気を読まない」こともできます。
先人たちの業績から学んだり、さまざまな分野の人に広く耳を傾けたりするときには「空気を読んで」います。
社会のルールに従順に従えなければ、研究や作品を発表する機会を持てないでしょう。
しかし、通説に縛られず新しいアイデアを送り出したり、男性らしさや女性らしさという、社会が望む型にはまらない、という点では「あえて空気を読まずに」振る舞います。
時と場合によって「空気を読むこと」も「空気を読まない」こともできるので、創造的な人は謙虚なようにも傲慢なようにも、柔軟なようにも頑固なようにも、賢いようにも愚かなようにも見え、一般人には理解しがたい複雑な振る舞いをするのです。
⑨感情的でありながら理性的
創造的な人の九つ目の特徴は、感情のままに没頭する主観的な視点と、冷静に分析する客観的な視点の両方を持ち合わせていることです。
主観的で没頭しやすい人とは、周りが見えなくて、自分の気持ちだけで突っ走って思い込みが激しい人のことです。
情熱にあふれているのはよくわかりますが、自分が空回りしていることにさえ気づきません。
客観的で冷静な人とは、落ち着いて物事をよく考え、理性的に分析するのが得意な人です。
コンピューターのような判断力がありますが、人間味のある感情にとぼしく、機械的です。
大半の人は、どちたかに偏っている傾向にありますが、創造的な人は、自在に二つの視点を切り替えることができます。
たとえば作家であれば、物語を書いているときには、没頭して情熱をこめ、感性のおもむくままに書き連ねますが、推敲する段になると、まるで初めて読む読者になったかのような客観的な視点で分析し、つじつまの合わないところや改善点を洗い出します。
つまり、創造性とは、主観的な視点と客観的な視点を交互に切り替えながら積み重ねていくプロセスだといっても良いでしょう。
⑩ひどく苦悩しながら、とても楽しんでもいる
最後に、創造的な人の十番目の特徴は、多くの苦悩を経験すると同時に、多くの楽しさや喜びも経験するということです。
その理由について、チクセントミハイは、創造的な人は「開放性と感受性」を持っていると述べています。
これはつまり、広く社会にて出ていきたいと感じる外向的な側面と、周りの評価を気にする内向的な側面が同時に存在しているということでしょう。
自分の研究や作品を発表して認めてもらいたい、同じ興味を持つ人とつながりたいと思いつつも、そうするなら、批判的な言葉や鈍感さに傷つけられるというジレンマを生み出します。
仕事や趣味に限らず、日常的な人間関係でも、社交的で大胆な面と、繊細で傷つきやすい面とが同居していて、内なる葛藤に悩まされるかもしれません。
それが創造的な人たちが抱え持つ苦悩です。
しかし同時に、創造的な人たちは、そうした苦悩が雲散霧消する瞬間もよく知っています。
自分が愛してやまない創造的な活動に没頭している時間は、思い煩いや不安をすべて忘れて、ただひたすらに喜びと楽しさを味わえるのです。
しかし、その人が自分の専門領域で働いているときには、不安や心配事は消え失せ、それらは無上の喜びに変わる。おそらく、もっとも重要な特質、言い換えれば、創造的な人々すべてに恒常的に見られる特性とは、創造のプロセスそれ自体を楽しむ能力であろう。
p.84
創造的な人たちは、起伏の激しい、ジェットコースターのような人生を送り、人生の良い面も悪い面も、同時にすべて味わいつくす、充実した日々を送ることができます。
そのように良いことも悪いことも全力で味わい尽くしているからこそ、創造的な作家が創る作品には人生のうまみが濃縮されていて、創造的な学者が著す著作には、鋭い洞察が秘められているのかもしれません。
創造的な人に共通する点はあるか?
クリエイティブな才能が高い人の特徴について解説していきましたが、もちろんこの10個意外にも様々な特徴があるとおもいます
それは、どの芸術の領域の才能なのかによっても異なります。
その中で、あえて共通点をあげるとするならば、「複雑性」ではないでしょうか
クリエイティブの中では次のように書かれています。
では、創造的な人々を特徴づける特性はまったくないのだろうか? もし創造的な人々の性格と他の人々の性格を分け隔てるのは何かを一言で言わなければならないとすれば、私は複雑さを挙げるだろう。
p.64
チクセントミハイが見いだした、創造的な人の共通項、それは「複雑さ」でした。
「複雑さ」とは何を意味するのか、チクセントミハイは、続けてこう説明しています。
創造的な人は状況に応じて、同時に積極的かつ協調的であったり、あるいは、あるときには積極的で、あるときには協調的であったりする。複雑な性格を持つということは、人間の能力の全範囲に潜在的に存在しながらも、通常は、私たちがどちらか一方の極が「良く」、もう一方の極が「悪い」と考えるために退化してしまうような、多様な特性すべてを表現できるということを意味している。
p.65
創造的な人は、競争的でもあると同時に協調的でもあり、内向的であると同時に外向的でもあり、奇抜であると同時に真面目である、といった、「多様な特性すべてを表現できる」複雑な内面を有しているのです。
HSPと芸術の才能は関係あるのか?
クリエイティブの著者、チクセントミハイ、創造的な人の性格を説明するにあたり、10番目の点の中で、「感受性の強さ」を挙げていました。
HSPは生まれつき感受性が高いことで知られており、HSPと芸術の才能が関係しているという声も聞かれます。
HSPの人たちは確かに、大半の人よりも創造的と言えるでしょう。
しかし、チクセントミハイが挙げた人たちのようにエネルギッシュで多作だったり、行動力があったり、好奇心旺盛に次から次へと新しいものに手を出したりはしません。
HSPの特徴は、感受性豊かで、直感が鋭く、謙虚で、控えめなことです。
それらは、10の特徴に挙げられていた両極端な性質の片側だけしか満たしません。
つまり、HSPはチクセントミハイの言う複雑な性格には当てはまらないのです。
HSPは時おり「内向型人間」と混同されますが、調査によると、HSPの70%が内向型で、30%が外向型だそうです。
HSPの敏感さは遺伝による生まれつきの特性ですが、外向型・内向型という気質は、養育環境による後天的なものとされています。
しかし、HSPの70%が内向型で、30%が外向型ということは、いずれにせよHSPの人たちはみな、おおまかにいって内向型か外向型かどちらか一方に区別できるということです。
ここでもやはり、先ほど紹介した、「内向型人間でありながら外向型人間でもある」という複雑な性格の特徴は満たしていません。
それゆえ、チクセントミハイが挙げた創造的な人の傾向のうち、「感受性が強い」という部分だけに注目して、彼らはHSPである、とみなすのは無理があります。
確かに、極めて創造的な人たちが「感受性が強い」のは事実です。
そのため、HSPは、しばしば高い創造性と結びつけられます。
創造性が高い人がHSPの性質を有してはいるのは確かでしょう。
しかし、本当に芸術の才能がある人は、単なるHSPではなく、もっと珍しい、もっと複雑なタイプの人たちである、と考えるのは理にかなっています。
「HSP/HSS」という珍しいタイプと創造性について
創造的な人たちの生まれつきの特徴として、「感受性の強さ」以外に、もうひとつ別の要素を挙げています。
チクセントミハイは、創造的な人たちが、幼少期から「感受性が強い」だけでなく、「並外れた好奇心」をも持ち合わせていることに気づきました。
子どものころ神童とみなされていなくても、異例なほど好奇心が強く、さまざまな物事に普通以上の強烈な関心を示し、あらゆるものに手を出し、あらゆるものに取り組み、しかも徹底的に知ろうとします。
このような性質は、心理学では新奇追求性と呼ばれます。
生まれつき新奇追求性の強い子どもは、HSPとは別の性質、刺激追求型(HSS:High Sensation Seeking)と呼ばれています。
HSSは、用心深いHSPと正反対とも言える特性ですが、ここで注目したいのは、正反対であるからといって、両立しないわけではない、ということ。
HSPという概念を作った心理学者エレイン・アーロンは、HSPまたHSSという概念にそって人々を分類すると、4つのタイプに区別しうるとしています。
1.HSP/非HSS……内省的で、静かな生活を好む。衝動的ではなく、あまり危険を冒したがらない。
2.非HSP/HSS……好奇心に満ち、やる気があり、衝動的で、すぐに危険を冒し、すぐに退屈する。与えられた状況の繊細なことにあまり気づかないし、興味もない。
3.非HSP/非HSS……それほど好奇心もなく、内省的でもない。あまり物事を考えることなく淡々と生活している。
4.HSP/HSS……移り気である。HSPの敏感さとHSSの衝動性の両方をもつため、神経の高ぶりの最適レベルの範囲が狭い。つまりすぐに圧倒されるが、同時に飽きっぽい。新しい経験を求めるが、動揺したくないし、大きな危険は冒したくないのである。あるHSP/HSSによると、「いつもブレーキとアクセルの両方を踏んでいるような気がする」そうだ。
もうおわかりと思いますが、この4つのタイプを見れば、チクセントミハイのいう創造的な人、「複雑な性格」の持ち主が、どこに当てはまるのかは、一目瞭然です。
HSP/非HSS、つまり純粋なHSPは内省的で創造性を発揮しますが、両極端の性質を持つ「複雑な性格」ではありません。
非HSP/HSS、つまり純粋なHSSは活動的ですが、じっくり考えないので、深みのある創造性を発揮できません。やはり「複雑な性格」ではなく、はっきり言うと単純です。
非HSP/非HSS、いわゆる普通の人は、チクセントミハイが述べていた「平均的」「中間的」な性質を持っているので、まったく両極端ではなく平凡です。
複雑な性格を持つ創造的な人とは、間違いなく最後の4番目、HSP/HSSの人たちのことです。
敏感さと衝動性を両方持っていて、内向的であると同時に外向的でもあり、あたかもアクセルとブレーキを同時に踏んでいるかのような珍しいタイプです。
つまり、極めて創造的な人たちに共通する「複雑な性格」とは、感受性の強さと並外れた好奇心を両方持ち合わせた、生まれつきの遺伝的性質HSP/HSSを土台に形成されたものである、ということができます。
まとめ
今回は創造性が高い人の特徴と、HSPの関係について調べてみました。
HSPが芸術的才能が高いのでは?と予想していましたが、どうやらそう単純なものではないようです。
HSPという概念を提唱したエレイン・アーロンのチェックテストでは、どの文化でも、だいたい人口の15~20%がHSPだとされています。
5人に1人ということは、学校の同じ教室のクラスメイトの中に5人かそれ以上HSPがいるということです。
確かに芸術の才能がずば抜けている人が、5人に1人の割合では多すぎるように思います。
そう考えるとHSPの中でも珍しいタイプのHSP/HSSが高い創造性を兼ね備えていると言っても、矛盾はなさそうです。
しかし、創造性というのは人間の様々な要素から成り立っており、「複雑性」だけで解明できるものではありません。
違った角度から芸術性や創造性について調べてみると、新たな発見があるかもしれませんね。