アートセラピー(芸術療法)と言う言葉を知っていますか?
芸術療法(アートセラピー)は主に欧米の精神医療の中で研究され、心のケアに役立つ心理療法として認められており、うつ病や統合失調症、心身症などの患者に有効とされています。
私自身もトラウマ(PTSD)の治療として芸術療法を経験したことがあり、効果を感じることができました。
今回はあまり知られていない芸術療法(アートセラピー)の特徴や効果、注意点について解説したいと思います。
1,芸術療法(アートセラピー)とは
芸術療法(アートセラピー)とは絵画や粘土、自分の体などを用いて行う心理療法やリハビリテーションのことです。
私たちは思考や感情を表現するために普段、言葉を使いますが、芸術療法では言葉の代わりに芸術表現を用います。
芸術表現と言っても様々な種類があり、絵画、造形、ダンス、演劇、文学などが含まれます。
これらのアートセラピーの目的として次の2つがあげられます。
- 芸術を通して自分の本当の気持ちに気づく
- 自分以外の第三者(治療者や家族など)が自分の気持ちに気づく
ことです。
精神的な問題を抱えている人は、自分の内面を言葉で表現することが困難な傾向にあります。
また、慢性的なストレスなどが原因で、自分の感情や思考が解らなくなっている場合もあるでしょう。
そのような、自分では気づくことができない気持ちや心の奥深くに隠れている本当の思いを明らかにすることで、自分の問題に気づくことができ、変化する意志を育むことができます。
また、第三者からも本人の芸術作品を通して、新たな気付きがあるため、今後の治療に役立てることができます。
このような気付きを通して、自分や他人の理解、洞察が進めるのが芸術療法の目的です。
2,芸術療法の特徴
芸術療法(アートセラピー)の特徴
・言葉を使わずに表現できる
・芸術作品から問題解決の糸口を見出したり、自分では気づけかった本音に気づける
・幅広年代に対応可能
アートセラピーの最大の特徴は、言葉では表現することが難しいことを表現できる点にあります。
また、子どもや高齢者といった幅広い年代の人や障害がある人にも適用できる点も特徴の1つです。
子どもや高齢者、障害がある人の表現やイメージは芸術作品を媒介することで理解しやすくなります。
また、絵画や粘土などの作品に注目し、フィードバックを行うことで、作品を通して他者とコミュニケーションを取ることも可能になります。
そして、芸術作品には言葉では表現しきれないような心の本音(潜在意識)が表現されるため、治療者やカウンセラー、当事者がそれに気づくことができるのです。
また、作品だけでなく、作品過程にも患者本人のメッセージが現れることがあります。
どういう順番で作品を作るか、どの工程が楽しかったか、どの工程が苦痛だったかなど、作成中の様子のような非言語的メッセージにも思考や感情が現れたりします。
特にPTSDなどトラウマがある人は言葉で気持ちを伝えるとパニックになってしまうこともあります。
そのような人に対しても、言葉なしで手助けを行える点がアートセラピーの特徴なのです。
3,芸術療法の効果
芸術療法(アートセラピー)には次の5つの効果が考えられます。
- 脳に心地より刺激を与え、精神の安定(リラックス)、睡眠の質が向上するといった効果が期待できる。高齢者の認知症予防に用いられることもある。
- 芸術療法を受ける人の利点として、言語による表現よりも抵抗感が軽減される。
- アートセラピーは新たな発想や創造を生む可能性がある。絵画療法で用いるクレヨンや色鉛筆、造形療法で用いる粘土などは幼稚園や小学校低学年に戻った気分にさせてくれる。大人になってからは味わうことが難しい感情になることで、いつもとは違う発想や創造が生まれる可能性がある。
- グループで芸術療法を行う場合には、同じ課題に一緒に取り組んでいくことで、グループの信頼関係を高める効果も期待できる。特にダンスや演劇などは複数人で作品を創り上げていくため、作品を通してコミュニケーションを取ることができ、言葉がなくても信頼関係を築くことが可能になる。
- 治療者にとっての利点として、言葉による表現だけでは見えなかった心の内面が作品に投影されることで、評価や見立ての指標ができたり、患者本人のより深い理解につながる。
アートセラピーは治療を受ける側が効果を感じられるだけでなく、治療をする側にとってもメリットが大きいのが特徴。
なお、芸術療法を治療に取り入れる人の中でも、芸術活動が本格的な心理療法への導入手段であるとする立場と、芸術活動そのものが治療であるとする立場で分かれるようです。
4,アートセラピーの種類(芸術療法一覧)
芸術療法として適応される、芸術活動の種類として
絵画、音楽、ダンス、造形、陶芸、手芸、心理学、箱庭、書道、写真
などが含まれ、幅広いです。
芸術の特徴によって、種類を大きく4つに分けることができます。
1,人間の表現(絵画、文章、彫刻、粘土、写真など)
2,表現に身をさらす(演劇、コント、ダンスなど)
3,人間と物で創り上げる物(マリオネット、仮面、化粧、道化など)
4,放射されるもの(声、音楽など)
私たちは、これらの芸術活動を必ず経験しています。
なぜなら、芸術は学校教育の中に取り込まれているからです(図画工作、音楽、美術、体育、書道など)。
また、習い事や趣味として取り組んできた人も多いのではないでしょうか。
このため、芸術を心理療法に取り入れる際の抵抗感は低いと考えられています。
これらの芸術活動を用いた、芸術療法として以下のものがあります。
絵画療法、造形両方、箱庭療法、コラージュ療法、身体療法、音楽療法、文芸療法などがあります。
芸術療法(アートセラピー)のやり方についてはこちらの記事も参考にしてください。
5,芸術療法の注意点
作品に芸術性(上手い、下手)は関係ない
芸術療法の一番の目的は言葉では表現できない、心の奥底に隠れた深層心理を明らかにすることです。
しかし、作品に他者からの評価(上手い、下手)や芸術性の評価が加わると、作品の本当のメッセージが見えなくなってしまいます。
子供のころに絵を書いたり、歌を歌うことが好きだったのに、それを周りから評価されると、嫌いになってしまった経験はありませんか?
私は子供のころから歌を歌うことが好きでしたが、中学校の時から急に嫌いになってしまいました。
その原因は歌に点数をつけられ、先生に認めてもらうために歌を歌わなければいけなかったことや周りから下手だと思われているのではないかという不安などがあり、歌を歌うことを純粋に楽しめなくなったからです。
芸術療法は周りからの評価を気にした時点で、自分の本当の気持ち以外の何かが入ってしまいます。
作品に対する評価は行わず、思うがままに作品を作成できる環境作りが大切です。
支援者は芸術性を求めすぎたり、押しつけにならないように注意する必要があります。
作成後の気づきが大切
芸術療法は決まった答えがありわけではありません。
実際に芸汁療法を行ってみた後に、自分がどんなことに気づいたかが大切です。
そして、気づいたことを家族や治療者に伝えることで、気づきがより明確になります。
作品を作るだけではなく、そのあとの気づきを見つける時間をしっかりと確保し、その気づきを周り共有しましょう。
作品を作り上げただけで終わりにならないようにすることが注意点です。
6,より詳しくアートセラピーを学びたい方
芸術療法は欧米を中心に発達してきたため、日本ではまだマイナーなイメージがありますが、少しずつ国内でも注目さてきています。
しかし、芸術療法にあまり知識がない人がセラピーを行うと、逆効果になる可能性もあります。
アートセラピーの対象者は複雑な背景を抱えている方が多いですから。
そのような状況に合わせ、芸術療法の専門家を育成するためのアートセラピー資格というものが存在します。
アートセラピー資格資格取得講座を受講することで、資格を取得することが可能です。
アートセラピーの資格は次のような人におすすめ。
・自分や家族の健康の為にセルフケアに役立つ学びをしたい方
・人のために役立つ統合医療の知識を学び、自身の仕事に活かしていきたい方
・好きなこと、興味関心のある分野で資格を取得して自信をつけたい方
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7,まとめ
現代社会は、かつてないほど複雑になり、心と体のバランスを崩したり、ストレスを抱える人が増えています。
また同時に、医療の現場では、病気の根底にある心の問題や生活環境など、 その人を包括的にケアできる医療の必要性が叫ばれるようになりました。
そこで注目され始めたのが芸術療法(アートセラピー)です。
芸術療法で今までとは違った形でアプローチできれば、治療が難しかった症例でも変化や気づきが得られるかもしれません。