ADHD(注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害)の人は睡眠に問題を抱えやすいと言われています。
特に朝起きることができず、学校や職場に遅刻してしまい、生活に支障がでているケースが多いようです。
私自身もADHDと診断されており、ついつい夜更かしして朝起きるのが辛く、そのせいで昼夜逆転生活になってしまうという悩みを抱えていました。
発達障害、特にADHDの人は同じような悩みを抱えている人がいるかもしれません。
なぜ私のようなADHDの人は朝起きることが難しいのでしょうか?
そして、その苦しい状況から脱出することはできるのでしょうか?
今回はADHDの朝起きれない原因とその対策について解説します。
1、努力不足や怠けではない、起きられない原因とは?
ギアチェンジが苦手
朝起きられないことは本人の努力不足とか自己管理不足のせいにされがちですが、全く関係あるません。
起きられないからと言って自分を責める必要はないのです。
ADHDの人が起きられない原因は睡眠リズムに問題を抱えやすい点にあります。
ADHDの人を対象にした研究によると、彼らは睡眠リズムが不規則に乱れており、睡眠時間や入眠時間、覚醒時間が日によって変動するそうです。
寝つきや寝起きが悪く、睡眠時間も長すぎたり、短すぎたりと安定しません。
このような体内時計の不安定さから、起きることが困難になると考えられます。
この体内時計の不安定さはADHD独特の脳機能からきていると言われています。
ADHDの脳は前頭葉の機能が低下していることが多いため、動き出すことが難しく、さらに動き出した後に止まることも難しいのです。
車に例えるならギアチェンジが上手くいっていない状態で、「寝ている」状態から「起きている」状態への移行がスムーズにいきません。
朝起きて、学校や職場に行こうと思っても中々活動することができない、逆に疲れているはずの夜に寝ようと思っても中々寝付けない。
これがADHDの人の「動き出すことが難しく、さらに動き出した後に止まることも難しい」ということです。
また、ADHD特有の前頭葉機能低下による注意力不足も大きく関係しています。
注意欠陥多動性障害という名前からもわかるように、何かに集中すると、次の動作に上手く移行できません。
そのせいでいったん寝てしまうと朝起きれず、歯磨きや着替えなどの準備もできず、家を出る時間も遅くなってしまいます。
注意力低下、注意力散漫が起きられない原因となっているのです。
ホルモン分泌の不調
私たち人間は朝起きることがストレスなので、起床時間が近づくとあらかじめストレスに身体を備えさせるコルチゾールが分泌されます。
このコルチゾールのおかげで強い意志がなくても朝起きることができるのです。
また、寝る前になると睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されるため、私たちは自然と眠りにつくことができます。
コルチゾールは普通、目覚めているとき、集中しているとき、仕事をしているときに高まり、だいたいAM9時に最も高くなり、PM11時に最も低くなると言われています。
しかし、ADHDの人はコルチゾールが下がっていくはずの夜に頂点に達し、睡眠を促すメラトニンの分泌が遅れてしまいます。
つまり、ADHDの人はホルモン分泌が上手くいかないため、寝ようとする時間にメラトニンが分泌されず、起きようとする時間にコルチゾールが分泌されないのです。
意志が弱いから朝起きられないのではなく、ホルモン分泌の切り替えが上手く機能していないため朝起きられないです。
2、朝起きるための正しい対策
無理やり早く起こすのはNG
ADHDのせいで朝起きれない人を無理やり早起きさせると、ADHDの症状が悪化する可能性があるので要注意です。
また、ADHDの人は脳機能低下による不安定さを抱えているため、睡眠時間を削り、無理やり早く起こすとうつ病や双極性障害のような二次障害が現れる可能性があります。
睡眠障害改善のために一般的に言われている「早寝、早起き」はADHDの人には通用しません。
早寝、早起きを達成できるのは、健康で体力がある人のみなのであり、体内時計が普通の人とずれているADHDには当てはまらないのです。
私も学生時代に親から「朝起きられないのは、夜早く寝ないからだ」とよく叱られていました。
朝になると無理やり親に叩き起こされ、半分寝ているような状態で学校に行かされていましたが、このような行為は子供たちの脳を疲れさせる、親の身勝手な行動と言えるでしょう。
このような状態が続けば、慢性的な睡眠不足から慢性疲労へとつながり、最終的に不登校や欠勤になる可能性があります。
睡眠時間や就寝、起床といったことは人それぞれに合ったリズムがあります。
健康に良いとされている早寝、早起きも、それが生活のリズムに合わなければ逆に健康を損ねてしまうのです。
人はそれぞれ異なる遺伝子があり、違った個性を持っています。
すべての人に同じ睡眠パターンを当てはめるのではなく、それぞれの個性に合ったリズムを見つけなければいけないのです。
脳に栄養を与え、体内時間を調整する
朝起きられないのは本人の努力不足や怠けではなく、睡眠障害であることを認識し、対策を立てることが重要です。
睡眠の問題を解決する方法として、光やメラトニンを使って体内時計を調節することが有効とされています。
起きられない原因のところでも書きましたが、メラトニンというホルモンが正確に分泌されないために体内時計の狂いが生じているのです。
メラトニンが正しいリズムで分泌されれば、コルチゾールも正しい時間に分泌され、朝の目覚めを助けてくれます。
また、セロトニンという心を落ち着かせるホルモンがありますが、セロトニンが朝に分泌されると目覚めが良くなります。
体内時計の調節に有効なメラトニンやセロトニンはサプリメントとして手に入れることが可能です。
セロトニンやメラトニンといった脳内ホルモンを作るために必要な栄養素は「タンパク質、カルシウム、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、鉄、ビタミンB6、マグネシウム、銅」です。
このような栄養を普段の食生活から摂取することは大変困難なので、まずはサプリメントの服用から始めてみることをお勧めします。
私はヒキウツ笑顔という睡眠障害を改善するために作られたサプリメントを試しています。
セロトニンやメラトニンといったホルモンを分泌するために必要な栄養素をしっかり摂取できるので、朝起きられるようになることを自分自身期待しています。
薬物療法のような副作用もないので、子どもから大人まで誰でも飲めるところも安心ですね。
実際メラトニンやセロトニンのサプリメントにより睡眠のリズムを調節できたという声も多く聞かれます。
サプリメントの摂取で改善されなければ、薬の服用や光療法と言った特別な治療が必要かもしれないので、一度専門の病院を受診し相談してみましょう。
高照度光療法などの専門の治療も体内時計の調節に有効とされています。
寝る前の習慣に目を向ける
朝起きられないということは、夜に寝付けないという問題を抱えている場合が多いです。少しの生活習慣の改善で寝付きが良くなるかもしれません。
- 寝る前に光を浴びない
寝る前に明るい光を浴びると身体は中々寝るモードに入れません。
スマホやテレビ、ゲームなどは寝る前は極力控え、間接照明などを利用し、身体を寝る体制に切り替えましょう。
- 眠くなるまで布団に入らない
早く布団に入れば眠れるというのは間違っています。
眠くなくても、布団に入ってしまえば自然と眠くなるという話はよく聞きますが、そのせいで不眠症が悪化してしまう可能性があります。
なぜなら、布団の中で寝ることができなければ「布団の中は寝れない場所」という認識が脳の中にできてしまうからです。
「布団の中=寝る場所」という認識を与えるためにも、眠くなってから布団の中に入るようにしましょう。
- 寝る前に瞑想を取り入れる
寝る前の瞑想を習慣づけることで、自然と深い眠りにつけるようになります。
ADHDに人は寝る前になると頭が冴えてしまい、絶好調状態になってしまうことが多いです。
これは交感神経が優位となっており、脳が興奮状態に陥っているということです。
寝る前になると通常、副交感神経が優位になりますが、ADHD特有の脳機能により交感神経の働きが強くなり、寝るモードに入れません。
瞑想は交感神経と副交感神経のバランスを整える効果があり、交感神経の働きを鎮め、リラックスすることができます。
詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
自分の睡眠習慣に生活を合わせる
視点を変えた対策としては、日常生活を自分の睡眠リズムに合わせてしまうという方法です。
つまり、無理に朝起きるのを辞めてしまうのです。
これは自分が生活している環境によって難しい人も多いかもしれませんが、実現できれば、かなりストレスを減らすことができます。
現在の社会は普通の人の睡眠リズムに合わせた生活構造になっています。
そこから抜け出す道を模索してみてもいいかもしれません。
例えば、夜型の人であれば夜勤専門の職に就いたり、時間の自由が効く自営業にしたり、学生であれば通信学校やフリースクールなどを利用するのもいいでしょう。
3、まとめ
夜にぐっすり寝て、朝に自然と起きるという行為は普通の人にとっては当たり前の行為です。
しかし、睡眠リズムがずれてしまっているADHDの人は朝起きようとするだけでも相当なストレスが伴います。
しかも、周りからは努力が足りないとか怠けと非難され自分を責めてしまいます。
しかし、今回紹介した内容のようにADHDの人が起きられないのは脳の機能低下に問題があるため、一般的なアドバイスは全く通用しません。
ADHDの脳の働き方を理解した上で正しい対策を立てる必要があるのです。