こころの病気を抱えながらも日常生活を支障なく送るために

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うつ病

慢性的なストレスや幼児期のトラウマ、身の毛もよだつような恐ろしい出来事など様々な出来事が原因で精神疾患になってしまう。

そして精神科の医師がどの症状に注目するかによって診断名が変ってくる。

例えば絶望感に強い印象を受ければうつ病、気分変動に焦点を絞れば双極性障害、落ち着きのなさと注意力の欠陥に注目したらADHD(注意欠陥・多動性障害)、トラウマ歴があればPTSDという診断を受けるかもしれない。

心に負った傷跡が痛めば、日常生活が送られないほど苦しめられることになる。

その傷跡は不安や抑鬱感となって現れるかもしれない。

他にも胸が押しつぶされるような感覚や、自分が制御できなくなるという恐れ、危険や拒否に対して常に身構えてしまうこと、自己嫌悪、悪夢とフラッシュバック、今に集中できない、他者に心を開けないことなど。

このような症状に苦しめられると人は自分の人生を自分で取り仕切っている感覚がなくなってしまう。

私たちは原因となった出来事を無かったことにはできない。

しかし、その傷跡に対処することはできる。

対処とは不快な感情に圧倒されたり、激怒したり、恥じ入ったりせずに日常生活を支障なく送ることだ。

そのために必要なことを紹介したい。

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目指すべき場所

日常生活を支障なく送るためにはどのような事が必要なのであろうか。身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法の中にはこう書かれている。

(1)落ち着いて意識を集中した状態になる方法を見つけること。

(2)を思い出させる光景や思考、音、声、身体的感覚に反応するときに、その落ち着きを保ち続けることを学ぶ。

(3)今を思う存分生き、周囲の人々と充分に関わる方法を見つける。

(4)どうにか生き延びてきた手段についての秘密も含め、自分に隠し事をしないで済むようにする。

p.333

この四つを見つけ出すと、日常生活を支障なく歩めるようになり、回復への道を少しずつ上っていけるようになる。

私たちは原因となった辛い出来事に立ち返らなければ行けない。

しかしそれは自分が安全だと感じ、過去に立ち返ることによって再び傷を負うことが無くなった後だ。

最初にしなければいけないのが過去と結びついた感覚と情動に圧倒されていると感じる事態に対処する方法を見つけることである。

まず理解しなければいけないことは私たちの脳は人間的な理性脳と動物的な情動脳に分かれているということだ。

理性脳が思考というかたちで現れるのとは対照的に、情動脳は身体的反応というかたちで表す。

つまりなぜそう感じるのかを理解したところで、どのように感じるのかは変らない。

疲弊すればするほど、理性脳は情動脳に主導権を奪われていく。

脳に働きかけるセラピー

ストレスを解消するための課題は理性脳と情動脳との適切な均等を取り戻して、どのように反応し、どのように人生を送るかを自分で取り仕切っていると感じられるようにすることだ。

私たちは何かのきっかけで、過覚醒や低覚醒の状態になるときには自分で自分をコントロールすることができない。

過覚醒の場合には、感覚か過敏になり、混乱してしまう。

フィルターが機能しなくなり、音や光に悩まされ、望みもしない過去の光景が心に侵入し、パニックに陥る。

低覚醒の場合には体も心も機能停止の状態に陥り、麻痺しているように感じられる。

頭の働きが鈍り、動くことも困難になる。

過覚醒や低覚醒になると、人は経験から学ぶことができなくなる。

このような状態では日常生活に支障を来してしまう。

日常生活をしっかりと歩むためには、実行機能を回復し、それとともに自信や想像力、ユーモアさ取り戻すことが必要になる。

そのためには情動脳にアクセスして脳に働きかけるセラピーをしなければならない。

壊れた警報システムを修理し、情動脳を通常業務に戻し、食べ、眠り、親密なパートナーと結びつき、危険から身を守ることがきちんとできるようにすることが重要だ。

私たちが情動脳に意識的にアクセスできる唯一の方法は自己認識を通してであることを知っているだろうか。

つまり、自分の内部で何が起こっているかに気づいて、自分が感じているものを感じて、それらを受容することを可能にする機能を活性化しなければいけない。

そのためには、他人や将来のことなどの意識を外に向けるのではなく、自分の内部の経験を自覚して、内部の出来事と仲良くなる必要がある。

そのための方法を詳しく解説する

1.情動脳と仲良くする

日常生活で支障が出る場面は私たちが理性脳ではなく情動脳に支配されている時に訪れる。

つまり、過覚醒で興奮しパニックに陥っているか低覚醒で機能停止している状態にあっている時、自分のコントロールが難しくなる。

現在の過覚醒や低覚醒に対する治療の中心は薬物療法である。

薬を使って私たちの感じ方を変えることが主流なのだ。

しかし私たちは生まれながらにして自分を安定させておくための技能を持っている。

具体的には呼吸や歌、動きによって直接訓練できるのだ。


身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法の中にはこう書かれている。


薬や他の薬物療法で全く効果がなかった患者が、ヨーガを十週間実習するとPTSD症状が著しく軽減することを立証した。ニューロフィードバックも過覚醒や機能停止のために意識を集中したり優先順位をつけて物事を処理したりすることが困難な子供や大人にとりわけ大きな効果を発揮しうる。たとえ不快な記憶やぞっとするような記憶を呼び起こしている最中にも穏やかに呼吸し続けることを学び、体を比較的リラックスした状態に保つことが、回復のためには欠かせない。意図的にゆっくりとした深い呼吸を数回すると、過覚醒状態に副交感神経のブレーキがかかる効果に気づくだろう。呼吸に意識を集中させていればいるほど、得る物は大きい。注意を向けながら最後まで息を吐ききり、少し間を置いてから再び吸うと、とくに効果がある。

このように薬に頼らなくても、過覚醒や低覚醒に対処できるのである。

2.マインドフルネスを活用する。

先ほども述べたが、回復の鍵となるのは自己認識だ。

心の傷を癒すために最も重要なことは辛い感情に意識を向けること。

そして意識を向けた後どうなるかに注目することである。

心の病を負っている人は我慢できそうにない感覚と共に生きている。

そしてたいていの人はこうした感覚を避けようとする。

しかし、避けようとすればするほどその感覚にますます圧倒されるようになってしまう。

その感覚に対処する方法は自分の内面と向き合うしかないのだ。

体を意識すれば、私たちの内部の世界に接することができる。

簡単に言うと、自分の苛立ちや心配、不安に気づきさえすれば物の見方を変えやすくなり、無意識の習慣的な反応ではない、新しい選択肢が得られる。

そのために必要なことがマインドフルネスなのだ。

マインドフルネスによって感情も知覚も一時的なもであることを知ることができる。

身体的感覚に意識を集中して注意を払うと、自分ではコントロールできないと思っていた情動が、実は波のように満ちたり引いたりするのを認識でき、それと共に情動を抑制しやすくする。

こころの病気を患っている人は感じることを恐れている場合が多い。

今や私たちの敵は加害者ではなく自分自身の身体感覚だ。

不快な感覚に乗っ取られるのではないかという不安から体は凍り付き、心は閉ざされてしまう。

嫌な出来事は過去の物なのに情動脳は私たちが怯えたり、無力だと感じるような感覚を生み続ける。

多くの人は強迫観念に駆られ、社会的な活動を避けてしまうかもしれない。

変るためには、内部経験に心を開く必要がある。

その第一歩は心が感覚に注意を集中するのを許し、永遠に続くと思える辛い身体的感覚は一時的なもので、姿勢のわずかな変化や呼吸、思考の変化よって感覚が変ることに気づくことだ。

マインドフルネスを利用して自分の身体的反応を観察し、それに耐えられることを学んで初めて、過去と向き合う準備が整うのである。

今現在感じていることに耐えられなければ、過去に心を開いても苦悩が深まり、なおさら深い傷を負うだけだ。

体の混乱状態は絶えず変化するという事実を意識し続ければ、非常に多くの不快感にも耐えることができる。

マインドフルネスによって、心の中に散らばっている受け身のエネルギーを集約し、それを生きるためや問題解決のためのエネルギーの源にする。

マインドフルネスはうつ病などの精神疾患に有効であることが立証されている。

情動調節に関与する脳領域を活性化し、体の認識と恐れに関与する領域に変化をもたらすことも立証されている。

マインドフルネスの練習が必要なことは明白である。

3.人間関係を作る

良い支援ネットワークを持つということが、精神疾患から身を守るため、また再発を防ぐための最も効果的な要因である。

不安や恐怖に怯えているときに、信頼している人の心強い声や固い抱擁ほど心を落ち着かせるものはない。

回復するためには、心と身体と脳に、身構える必要がないことを納得させなくてはならない。

それが実現するのは体の芯から安全だと感じ、その安心感を過去の無力感の記憶と結びつけられるようになったときだ。

うつ病などの精神疾患は人間関係が原因で発症する場合が多いが、回復もまた人間関係の中で起こる。

家族や友人、専門のカウンセラーとのつながりはとても大切である。

そうした人間関係の役割は侮辱されたり批判されたりしたと感じないで済むという安心感や身体的、情動的な安心感を与え、起こった出来事の実情に耐え、対処するように勇気づけることだ。

回復するには同じ人間である他者と結びつかなければならない。

注意しなければいけないことは家族や友人、恋人など本来安心を与えてくれるはずの人からの裏切りに合うと、症状は一気に悪化してしまうことだ。

自分が本当に信頼できる人をより多く見つけ、関わり合いを持つことが重要だが、今まで他者から多く傷つけられた人は簡単に人を信頼できない。

人と親密になりそうになると、また傷つけられ、裏切られ、見捨てられるのではないだろうかという恐怖が引き起こる。

時には相手に傷つけられる前に、無意識に相手を傷つけてしまうかもしれない。

これは回復への大きな障害となる。

しかし自分の不快な感情や身体的症状と立ち向かうためには必ず助けが必要なのだ。

苦しい感情を安全に受け止め、情動脳からの不快なメッセージに耳を傾けてくれる人を見つけ出さなければいけない。

専門のカウンセラーやセラピストを探し出すことも有効な手段かもしれない。

4.身体的な同調や触れることの重要性について

私たちは生まれた時から、敏感に反応する表情や身振り、身体的接触によって愛着の土台を形成する。

しかし、心に傷を負うと身体的に同調できなくなる。

カウンセリングを受ける際、注意しなければいけないのが、患者が意思疎通する言葉に焦点を当てるのではなく、身体的なコミュニケーションを通して患者に安心を感じてもらわなければいけない。

現在、苦痛を除去するための主流は薬物療法である。

しかし、本来人間が苦痛を軽減する最も自然な方法は、触られて、ハグされて、体を優しく揺り動かすことだ。

これはパニック状態から落ち着きを取り戻す効果がある。

私たちは安全で守られていて、人生に主導権を握っているという感覚を取り戻す必要がある。

触れることは、心を落ち着かせるための最も基本的な手段だ。

人は身体の芯から安全だと感じなければ完全に回復することはできない。

そのためにも何らかのボディワークが必要になってくる。

5.行動を起こす。

ストレスは病気や疾患の原因とされているが、尋常でない状況に反応するための力と耐久性も与えてくれるのだ。

ストレスを適切な目的に使っていると心の病になる危険性が小さくなる。

無力と感じてしまう状況だと、人は自分を守るためにストレスを利用することができない。

ストレスが本人の体の不利に働き、不適切な反応が起こり続ける。

適切な状態に戻すためには、いつまでも続く緊張状態を終わらせなければならない。

体が標準的な状態まで回復し、安心してくつろぐことができれば、本当の危機に直面したとき行動を起こし対応できる。

苦痛の身体的感覚を自覚することに耐えられるようになると、辛い状況にいる間にわき起こったものの、生き延びるために制御された、叩きたい、押しのけたい、逃げたいといった、強烈な身体的衝動を発見しやすくなる。

これらの衝動は体をよじったり、向きを変えたり後ずさりするような体のちょっとした動きから現れる。

こうした動きを大げさにやってみて、それをどう修正するかあれこれ試すことによって、過去の辛い出来事に関連した不完全な行動傾向を安全なものにする過程が始まり、回復に繋がるのである。

身体療法は動いていると安全だという経験によって、患者が再び現在に身を置くのを助けることができる。

効果的な行動をとることの喜びを感じると、主体感覚と、自分を積極的に防御して保護できるのだという感覚を取り戻せる。

人を圧倒するような力に屈服するように強いられると、耐えることによって生き延びる。

深く刻み込まれた屈服のパターンを克服する最善の方法は、自ら積極的に行動して防御するための身体能力を回復することだ。

恐れによって実行機能が稼働停止し、凍り付いてしまう。

しかし、恐れを積極的な闘争エネルギーに変えることを何度も繰り返せば、この凍結反応を解除することができるのだ。

まとめ

私たちは苦しむために生まれてきたわけではない。

過去を変えることはできないが、過去の影響に対処して、未来をより良くすることは可能なのだ。

ここに書かれていることを実践すると、落ち着きを取り戻し、不安や恐怖に襲われてもパニックに陥ることなく、自分でコントロールできるようになる。

また、今を思う存分生き、周りの人と積極的に関わることができる。

自分にも他人にも正直に生きることができるようになる。

そうすれば、たとえ精神疾患を抱えていようが、日常生活を支障なく送ることができるようになるだろう。

大事なことは決して無理をしないことである。

心の傷が深い人ほど、内面と向き合ったときの反動が大きい。

耐えられなくなったら、逃げてしまえばいい。

少しずつ、少しずつ、体中の安心の感覚を探りながら、継続してもらいたい。

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