嫌な記憶(トラウマ)は消せる!潜在意識へアプローチするための6ステップ

ソマティックエクスペリエンス

トラウマ記憶は忘れたいと思っても忘れることができず、いつまでも過去の嫌な記憶に苦しめられることになります。

なぜなら、忘れたいという意識的な顕在意識は深く巨大な氷山の一角で、水面下に隠れたトラウマ体験が潜在意識として人間の行動の根幹をなしているからです。

身体の奥深くに眠るトラウマとその記憶に有効に働きかけようとするなら、まず人間の記憶の原理を理解する必要があります。

今回は人が嫌な記憶を忘れられない原因と、トラウマ記憶を消すための具体的な方法について解説したと思います。

スポンサーリンク

1,参考書籍

今回参考にした書籍はピーター・A・ラヴィーン先生が書いたトラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復です。

人間の記憶の原理からトラウマ記憶が人々を苦しめる原因まで詳しく書かれています。

トラウマ記憶の性質を解き明かすことで、今まで困難であったトラウマ治療の道が開かれるのかもしれません。

治療の実例も多く載っているため、トラウマや嫌な記憶に苦しんでいる人にはとても参考になると思います。

2,トラウマの記憶と通常の記憶の違い

通常の記憶と嫌な記憶(トラウマ記憶)は大きく異なることがわかっています。

通常の記憶は時と共に変化し消えていきますが、トラウマの記憶は恐れや恥、激怒、崩れ落ちる感覚といった強烈な否定的感情を伴い、無意識に繰り返し思い出されます。

常に過去を忘れたいと望んでいるのに、なお恐怖が続いているかのように感じ反応し続けてしまうのです。

そして、トラウマを過去のものにすることができないので、自分の感情を抑えることで手いっぱいになり、現在に注意を向けることができません。

トラウマの記憶は過去に圧倒された経験によって刻まれた記憶痕跡であり、脳、身体および精神に深く刻み込まれているのです。

また、嫌な記憶は現在の状況に合わせてアップデートされることはありません。

むしろ、過去の嫌な記憶はあらゆる種類の恐れ、恐怖症、身体的症状および病気として現在に生きているのです。

楽しい記憶は理路整然とした物語として整理され、思い出すことができるのに対し、トラウマの記憶は感覚や感情、イメージ、匂い、味、思考などの意味不明な断片として涌き起こってきます。

これはトラウマ体験によってダメージを負った人にとどめを刺すようなものです。

この終わりのない悪夢に立ち向かうために私たちはどうすればよいのでしょうか?

その答えは、トラウマ体験を完了させることにあります。

トラウマ体験を完了させることが、過去と未来の間の連続性を回復させ、私たちを過去から現在に引き戻し、人生を前進させる鍵となるのです。

3,顕在意識と潜在意識

記憶は大まかに言って顕在記憶潜在記憶に分けることができます。

顕在記憶は意識されていますが、潜在意識は無意識なのです。

トラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復の中で顕在記憶の中には宣言的記憶エピソード記憶があると述べられています。(下図参照)

宣言的記憶が世間的に言う記憶であり、この記憶のおかげで物事を意識して覚えることができ、起承転結のある物語をそつなく語ることができるのです。

しかし、意識して思い出し、語ることのできる宣言的記憶は記憶のごく一部でしかありません。

宣言的記憶の役割は様々な情報を他者に伝えることであり、嫌な記憶を消したい場合に宣言的記憶にアプローチしても意味がないのです。

一方、潜在記憶は顕在記憶のように意識的に思い出すことができない記憶のことです。

この記憶は感覚、感情、および行動の寄せ集めとして湧き上がってきます。

トラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復の中でこの記憶のことを手続記憶と述べています。

手続記憶は自覚している意識レベルのはるか下で身体の記憶として保存されており、私たちの行動に最も強い影響を与えているのです。

例えば、自転車の乗り方を練習している場面を想像してみてください。

繰り返し練習しているうちに自転車を乗りこなせるようになり、一度覚えてしまえば意識しなくても操作でき、乗り方を忘れることもありません。

これが宣言的記憶から手続記憶へと変化したわかりやすい例である。

トラウマになってしまうような嫌な記憶は手続記憶として人に記憶され、同じようなことが起きた時に考える間もなく行動できるようになっています。

しかし、悲惨なことにトラウマを負った人は実際に脅威がなくても、不適応な反応を繰り返し、未解決な感情に苦しみ、混乱の中に留まったままになっているのです。

私たちがトラウマ記憶を忘れようとしても、忘れられないのは上辺の顕在記憶にアプローチしているからかもしれません。

トラウマ記憶から逃れるためには、より深い潜在記憶(手続記憶)にアクセスし身体と記憶の結びつきを変える必要があります。

4,手続記憶にアクセスする

手続記憶は意図的に思い出すこともできないし、思い出のように意識的にアクセスすることもできません。

では、どのように手続記憶にアクセスすればよいのでしょうか?

その答えをくれるのが自分自身の感情なのです。

トラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復の中にこのように書かれています。

感情は自分と自分の深い部分をつないでいる可能性があり、自分が何を必要としているかに気付かせる内的なきっかけとなる。感情はどのように自分自身と向き合い、どのように自分を知るのかの基盤となる。感情は内なる英知、声、直観、真の自分とつながりに関する重要な部分である。感情は、生き生きと活力にあふれ、人生に目的意識をもっている自分とつながる核心である。

p.40

つまり感情が手続記憶と宣言的記憶をつなぐ鍵となり、何を感じているかを意識することで顕在記憶と潜在記憶を行ったり来たりできるのです

意識されてない潜在意識とより意識されている顕在意識の間を行き来する能力は、嫌な記憶(トラウマ記憶)を完了するとともに、広くは過去の自分は何者だったのか、現在の自分は何者か、そして未来は何者になろうとしているのかを知るために必要なのです。

トラウマによる不適応な手続き記憶が長期にわたって存在し、そのせいで社会的な、あるいは人間関係の問題の根幹になってしまいます。

この間違った手続記憶を変えるためには、自らの感情を利用し、トラウマと再交渉する必要があります。

5,トラウマと再交渉する

私たちに危険が迫っていることを、感情が強く教えてくれています。

強度な怒り、恐れ、激怒を感じると私たちは戦うか・逃げるかという手続き記憶を無意識に選択し、迷いなく全力で行動することができるのです。

もし、こういった行動を完全に実行出来ないか、打ちのめされてしまった場合は無力感に満ちた不動状態の中で凍りついてしまいます。

トラウマの再交渉とは、慢性的な感情を穏やかに解放し、機能不全に陥っている反応の再構築を行うことによって、嫌な記憶を解放する手段なのです。

これによりトラウマを被る前に備わっていた、バランスと幸福を享受する能力を再び取り戻すことができるようになります。

嫌な記憶により自律神経系が調節不全を起こすと、過覚醒(圧倒)または低覚醒(シャットダウン・無力感)というどちらかの状態に陥ってしまいます。

その機能不全を起こしている自律神経系の手続き記憶にアクセスし、それらに付属した活性反応をよみがえらせ完了させるのです。

つまり、トラウマの再交渉とは不完全に終わった手続記憶に感情を手掛かりにしてアクセスし、手続記憶を再評価し完了させることで顕在記憶とあらためて結合させることなのです。

次にその具体的な方法を示します。

6,トラウマ記憶に再交渉する基本的な6ステップ

トラウマ患者の治療とは低覚醒(シャットダウン・無力感)から過覚醒(運動)へ、そして最終的には勝利と有能感へと至るための手続き記憶の変換の過程かもしれません。

手続き記憶(潜在意識)を変更するためには自らの感覚や感情が大事になるのは言うまでもないです。

トラウマの記憶に再交渉する基本的な6ステップを次にまとめました。

1,比較的穏やかで、力強く、地に足がついている「今・ここ」の経験を持てるようにする。この状態を作り、ポジティブな感覚とトラウマの元となった困難な感覚の両方を観察する方法を学ぶ。

2,身体の中に、どっしりと落ち着いた土台が作れたら、心地よく、地に足がついた感覚と、より困難な感覚との間を、ゆっくりと行ったり来たりする。

3,この五感を使って感じていく方法を「トラッキング」というが、これを行っていると、トラウマの手続き記憶が沸き起こってくる。それは、完了を阻害されており、一部が欠損している。この時、過剰に活性化したり、逆に極度の低活性な状態にならないよう気を付ける。もしそういった状態に陥った時は、最初のステップに戻る。

4,極端に分断された手続き記憶にアクセスしていくと、完了させることができず、失敗に終わった「断片」を見つけることができる。さらに自らの五感を探り、はじめに意図されていたが、実際は阻害されてしまっていた自己防衛反応を完了させる。

5,これによって、心身の中核の調節系がリセットされ、バランスと平衡が回復し、リラックスしながら適度に警戒した状態へと戻る。

6,最終的に、手続き記憶は、感情、エピソード、およびナラティブな記憶の機能とのつながりを取り戻す。これによって、記憶はそれが属する適切な場所、つまり「過去」におかれるのである。トラウマの手続き記憶は、もはや未完了かつ不適応な形で再活性化されることはなく、今や健全な有能感と勝利に変容されている。手続き記憶は、その構造全体が変化し、新たに更新された情動記憶とエピソード記憶の出現を促す。


潜在記憶には認知的なアプローチでは到達できません。

間違った方法でアプローチすれば再トラウマ化が起きたり、圧倒されてしまう危険があるのです。

トラウマ記憶に取り組む重要な点は、圧倒され過剰に活性化された状態でも、シャットダウンし崩れ落ち、屈辱に満ちた状態でもないく、現在にとどまりながら、トラウマ記憶を順に吟味していくことにあります。

まとめ

トラウマ記憶の原理を理解しないまま治療を進めると、トラウマという得体も知れない敵に圧倒されてしまうかもしれません。

ばらばらになったトラウマという記憶の断片を集め一つの物語にすることができれば、トラウマを過去のものにすることができるのです。

トラウマと記憶: 脳・身体に刻まれた過去からの回復はそんな期待を持たせてくれる書籍でした。

人間には障害を克服し、内側のバランスや平衡を回復する基本的で普遍的な力が生まれながらに備わっているのです。

トラウマ記憶の原理とトラウマ記憶に再交渉する方法がトラウマや嫌な記憶に苦しんでいる人の助けになってくれたら嬉しいです。

最後にジークムント・フロイトの言葉を紹介します。

心は忘れていても身体は忘れていない・・・有り難いことに

タイトルとURLをコピーしました