私たちは子供のころから物事をポジティブに考えることが良いことで、ネガティブ思考は悪だと教えられてきました。
私自身も親や学校の先生からポジティブを強要されてきました。
ネガティブな感情が辛い怒りや苦しみを生み出し、心や身体に悪影響を及ぼすと考えられてきたのです。
しかし、近年の研究ではポジティブ思考とネガティブ思考はどちらも必要で、ポジティブだけに執着するのは非常に危険ということがわかってきました。
今回は
なぜポジティブ思考に執着すると危険なのか?
なぜネガティブ思考も大切なのか?
について解説したいと思います。
1、なぜポジティブ思考は危険なのか?
物事をポジティブに考えることは悪いことではありません。
重要なのは、ポジティブな感情が自然と湧き上がってくるものなのか、無理にポジティブに考えようとしているのかの違いです。
体や心が元気な時は、自然とポジティブな気持ちになり、明るく元気に、エネルギーに満ちた行動をとることができます。
しかし、無理にポジティブになろうとしているときは、純粋な明るさや元気さを感じることはできません。
なぜなら、ポジティブになろうとしている裏側にはネガティブな感情が隠れていて、ポジティブに考えなければと思っている時点で、ネガティブな考えをしてしまっているからです。
そして、ポジティブだけを好み執着するということは、心の裏に隠れているネガティブな感情を否定することになります。
ネガティブな感情は自分の本当の気持ちで、これを否定することは、自分自身を否定すること、つまり、自己否定をしているのと同じことなのです。
つまり、無理にポジティブになろうと自己否定を繰り返すことで、自己肯定感がどんどん低くなり、辛くなってしまう、これがポジティブ思考が危険と言われる理由です。
2、ネガティブを排除し続けるとどうなるのか?
私は育った家庭の影響で元々ネガティブな性格でした。
しかし、ネガティブは悪い、暗い、陰気なイメージがあったため、次第にポジティブに憧れるようになりました。
ネガティブな自分では周りから認めてもらえないと思い、ネガティブな感情を否定し、蓋をすることで、無理やりポジティブになろうと努力したのです。
しかし、ネガティブな感情を見て見ぬふりをして、遠くに追いやったところで、負の感情が消えるわけではありません。
抑圧していた負の感情は次第に大きくなるため、「もっとポジティブにならなければいけない」という強迫的な観念にとらわれるようになりました。
ネガティブな感情や記憶とは向き合わず、否定を繰り返すことで、自己否定感が増し、ネガティブな感情がさらに大きくなってしまいます。
抑えきれなくなった負の感情はやがて爆発し、身体に悪影響を及ぼします。
私の場合はうつ症状の悪化が顕著に表れ、ポジティブに考えるどころか、体を動かすエネルギーまで失われて、心身ともに辛くなっていきました。
ネガティブな感情を抑圧し、抑え込むということは、自己肯定感を下げ、新たなストレスや苦しみといった辛い感情を生み出すことを忘れてはいけません。
3、ネガティブとポジティブのバランスが大切
これまでの説明からも、ネガティブな感情を無視し続けると、心身に悪影響を及ぼすことがわかると思います。
「ネガティブ思考は捨てて、なんでもポジティブに考えよう」という教えはどうやら間違えのようです。
ネガティブな感情から目を背けたとしても、いつか苦しむことになります。
大切なことはネガティブな感情を否定するのではなく、向き合い、認めることです。
ネガティブな感情、記憶、出来事のすべてが自分を作る大切な要素として認め、人生の一部として統合することができれば、ネガティブな感情を適切に処理することができます。
ネガティブな感情を認めることは重要ですが、ポジティブ思考は受け入れてはいけないということではありません。
ポジティブ思考とネガティブ思考は両方が自分自身を構成する大切な感情で、その2つをまるごと受け入れることで、自己肯定感は自然と上昇していきます。
先ほどの私を例に出すと「前向きになって、周りから認めてもらいたい」というポジティブな思いと「過去のトラウマのせいで前向きになれない」というネガティブな思いの両方を理解し、認めることで、気持ちが非常に楽になりました。
ネガティブな感情と向き合い、受け入れることで本物のポジティブな感情を味わうことができるようになるのです。
親や教師から教えられてきた「後ろ向きに考えるのはやめなさい、前向きに頑張りなさい」という教えよりも「前向きな考えも、後ろ向きな考えもどちらも大切」ということに気付ければ、人生を楽に生きることができるのではないでしょうか。
幸せの人というのはポジティブな感情も多く持っていますが、ネガティブな感情も同じくらい持っていているのです。
2つの感情を持ちながらも、人生に満足感を得ている人が、幸せな人と言えるでしょう。
ポジティブだけに執着していては幸せにはなれず、苦しみやストレスといった辛い感情を生み出す源になる可能性があるので要注意です。
最後にネガティブな感情と上手に向き合い、適切に処理する方法について3ステップで解説します。
4、ネガティブな感情と上手く向き合い、処理する方法(3ステップ)
ステップ① しっかり受け止める
まず、ネガティブな感情が襲ってきたときに、その感情をしっかり受け止めることが大切です。
無理にポジティブでいようとすると、本当の自分の気持ちがわからなくなり、心が麻痺してしまいます。
怒りや苦しみといった感情から逃げても、その苦しみや怒りは決してなくなりません。
ネガティブな感情から抜け出したいのなら、その感情から逃げるのではなく、しっかりとネガティブな感情を感じきることが必要です。
そうすればネガティブな感情は弱まります。
身体からのネガティブなメッセージ(悲しみや怒りなど)に注意を向け、ありのまま感じる練習をしましょう。
日常生活に瞑想やヨガを取り入れれば、今この瞬間の気持ちを受け入れる訓練になります。
ネガティブな感情もポジティブな感情も関係なく、ありのままを受け入れることこそが、自己受容であり、自己肯定感の向上につながります。
今この瞬間の感情に注意を向けることで、ネガティブな感情から抜け出すことができ、自然と前向きになれるのです。
ステップ② 分析する
ネガティブな感情を①のステップでしっかり受け止めることができたなら、次はその感情を分析することが大切です。
いつもなら感じることから逃げてしまうような負の感情について、一度立ち止まり、しっかり分析してみましょう。
なぜ怒りや悲しみといったネガティブな感情が存在しているのか?
それは自分の人生にどう影響するのか?
このようなことを考えるだけで、脳を活性化させ、ネガティブ思考を鎮めることができます。
たいていの人はネガティブな感情を怖がり、向き合うことを避けます。
しかし、冷静になって悲しみや怒りの感情を分析することは、その後の人生に必ず役に立ちます。
例えば、悲しみの原因が誰かから傷つけられたことだったとします。
そのとき、相手は悪意をもって自分を傷つけようとしていたのか、相手にも何か事情があったのではないか、自分の感じている悲しみは本当に適切か、などじっくり分析することができます。
様々な角度から分析を繰り返すことで、ネガティブな感情の意味を解釈したり、思考力を磨いて相手の立場に立って考えることで、新しい視点に気づいたり、真の問題点が明らかになるでしょう。
ステップ③ 正直に表現する
最後のステップはネガティブな感情を正直に表現することです。
今まで紹介したステップではネガティブな感情を受け入れ、分析してきましたが、それだけでは負の感情を完全に処理できません。
ネガティブな感情を受け入れることができたのなら、今度はその感情を正直に表現するのです。
ネガティブな感情から逃げることも、抑圧しきれず爆発させることも、どちらも辛さが増すだけで、自分のためになりません。
②のステップで負の感情をしっかり分析できているなら、解決するべき方法が見えているはずです。
あとは、その方法を行動に移すだけです。
ネガティブな感情は私たちに何かを訴えていて、そのことに気づき、問題点を見極め、解決のために行動することが、ネガティブな感情を正直に表現することなのです。
5、まとめ
「ネガティブ=悪いもの」という教え自体が苦しみや辛さを生み出す原因になっていたようです。
ネガティブ、ポジティブのどちらが良い悪いという二元の考えは捨てて、どちらも自分を形作る大切な一部として、受け入れることができれば、どんな感情も怖くはありません。
ネガティブで不快な感情も、受け入れ、分析し、表現することで、自分で自分を認めることができます。
これこそが本当の自己受容であり、自己肯定感の向上、成長へとつながっていくのです。