今回は発達障害の私が子どもの頃に親にして欲しかったことについて記事にしたいと思います。
子どもの頃といっても、記憶がはっきりしている小学生から中学生くらいの時に自分が感じていたことが中心となります。
私の場合、大人になってから(20才の時)に発達障害(ADHD)と診断されましたので、障害は関係なしに育てられました。
そのため非常に辛く、苦しい思いをしたのを覚えています。
なぜ苦しい思いをしたのかを明らかにし、親にしてもらいたかったことを知ることで、発達障害のお子さんとの新たな関わり方が見えてくるかもしれません。
- 発達障害の子どもとどのように接したらいいの?
- ADHDの子どもはどんなことに困っているの?
このような疑問をお持ちの方は参考にしていただければと思います。
子どもとの接し方で将来が大きく左右される
私は大人になり、社会に出たときに非常に苦労しましたが、それは発達障害があったからではありません。
大人になってから一番の支障になったのは、発達障害が原因とされる二次障害です。
子どもの頃からADHDの特性が強くでていましたが、それを周りから理解されることはありませんでした。
家の中では親に責められ、学校ではクラスメイトに責められ、最後に自分で自分を責めるという生活を長く続けていると心は確実に壊れていきます。
具体的にはうつ病や不安障害、対人トラウマ、依存症といった診断を受けてきました。
高校生のころには、完全なるうつ状態に陥っていましたが、自分も周りも精神疾患だと認めることができず、その治療も大人になってからでした。
現在は問題なく仕事ができ、結婚して子供も生まれ、幸せな生活を送っていますが、そこに行くまでには、かなり遠回りをしています。
それはADHDが原因ではなく、うつ病やトラウマなど、二次障害の治療に膨大な時間がかかったからです。
つまり、発達障害の有無ではなく、二次障害を発症するかどうかが、発達障害の子どもの将来を大きく左右するのです。
私の周りを見ていても、発達障害がありながらも社会で活躍している人は二次障害がありません。
自分の特性を最大限生かすことで医者や弁護士といったハイスペックな仕事に就いている知人も存在します。
しかし、大人になっても社会に出られず引きこもりになったり、自信を持てず非常に辛い思いをしながら働いている人がいるのも事実です。
このような人たちは二次障害を併発している場合が多いと言われています。
発達障害がある人が二次障害を併発せず、社会でのびのび生きていくには、子ども頃の過ごし方が非常に重要になってきます。
親が発達障害に少しでも理解があれば、必ず子どもの将来は変わってくるでしょう。
とにかく二次障害を併発しないことが重要です。
私の親は発達障害の存在も知らないような人でしたので、自分の特性を理解されることはありませんでした。
当時の苦しかった記憶を思い出し、実際に自分が親からして欲しかったことを紹介していきます。
親にして欲しかった8つにこと
①発達障害について正しく理解して欲しい
私が子供のころ、発達障害はあまり世間から認識されておらず、発達障害と診断される人の数も少なかったです。
そういう意味では私の両親が発達障害について理解がなかったのは仕方のないことかもしれません。
しかし、現在は状況が全く違います。
小中学生の8.8%に発達障害の可能性があるとの報告があり、クラスに2~3人は存在していることになります。
また、ニュースやSNSで発達障害の話題が頻繁に取りあげられ、自然と耳にする機会も増えてきました。
こうした中で、発達障害に理解がある人、ない人の差が広がってきています。
もし、自分の子供や身近な人が発達障害の可能性がある場合、まず発達障害について正しく理解してほしいです。
発達障害と言ってもASDやADHDなどがあり、その中でも人によって特性が変わってきます。
発達障害の特性を正しく理解できなければ、子供を正しくサポートすることは難しいでしょう。
私の親は発達障害に全く理解がなかったため、「怠け」や「努力不足」という言葉でかたづけられ、非常に苦しめられました。
しかし、大人になり、自分が発達障害(ADHD)と診断され、子供のころの特性は障害によるものだったと知れただけで、救われた気持ちになったのです。
親が発達障害に理解があるだけで子供は救われます。
今はインターネットや書籍などで簡単に情報が手に入る時代です。
発達障害を正しく理解し、子供の特性を知ることで、子供との正しい接し方がわかると思います。
発達障害の勉強については、子供の特性に合った書籍を読むことをお勧めします。
また、より詳しく学びたい方は定期的に勉強会や講演会も開催されているので、参加してみてください。
私のおすすめの一冊はイラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本です。
こちらの書籍は発達障害の子どものことを広く知ることができ、図解を交えて非常にわかりやすく解説しています。
必ず子どもとの接し方のヒントを見つけられるはずです。
②自分の将来が不安になるようなことは言わないで欲しい
私がよく親から言われていた言葉は「このままだとダメな人間になる」、「社会に出たら恥ずかしい」など自分の将来が不安になるようなことでした。
そのせいで、自分の将来に悲観的になり、不安感が強い性格になってしまいました。
だって、自分は「ダメで恥ずかしい人間」なんだというレッテルを張られれば、自己肯定感が下がり、将来が不安になるのも当然です。
発達障害がある人は、その特性にせいで自己肯定感が下がりやすく、自分に自信を持てない傾向にあります。
自己肯定や自信の低さが二次障害をもたらす可能性も大いにあります。
「あなたの未来はどんなことがあっても大丈夫」「あなたの将来は明るい」などの言葉を聞けたら、どんなに安心できたでしょうか。
将来を不安にさせるような言葉は子供の自己肯定感を下げるだけでなく、未来を生きる活力まで奪ってしまいます。
ただでさえ自信を失いやすい発達障害のある子に追い打ちをかけてはいけません。
発達障害があっても、将来は大丈夫というなるべくポジティブな言葉をかけてあげましょう。
実際に大人になって、発達障害があっても問題ないですし、大丈夫ですから。
③ありのままを認めて欲しい
私が親に一番言ってほしかった言葉が「ありのままのあなたで大丈夫だよ」「ありのままのあなたに価値があるよ」など、ありのままの自分を認めてくれる言葉です。
このような言葉を親からかけてもらった記憶はなく、いつも否定ばかりされてきました。
このような状態が続くと「今の自分には価値がない」という強烈な自己否定感を植え付けられます。
子供は親に認めてもらいたいですから、必死に自分を変えようとしますが、発達障害の特性は変えることはできません。
親に認めてもらえないと、学校など他で認めてくれる存在を探そうとしますが、それが上手くいくとは限りません。
いじめやトラブルに巻き込まれることだって十分あります。
私は親に認めてもらえなかった反動で承認欲求がかなり強い人間になってしまいました。
これは言い換えると人の顔色ばかり伺い、本当の自分を出せなくなるということです。
他者からの承認欲求を満たしてもらおうとすると、他人にばかり合わせることになり、精神的に疲弊し、本当の自分を見失ってしまいます。
子供のころに一度でも「ありのままのあなたで大丈夫だよ」と言ってもらえたら、どれだけ救われたでしょうか。
発達障害がある人は周りから否定されて、傷つくことが多いです。
子供のありのままを認めてあげて、承認欲求を満たしてあげましょう。
そのためにはやはり発達障害を正しく理解する必要があります。
④家の中を綺麗に整頓して欲しい
私はADHDの特性の一つである、整理整頓が非常に苦手でした。
机の周りには教科書やプリントが散乱しており、勉強を始めるときにはまず必要なものを探すことから始めなければならず、そのせいでやる気が出なかったのも事実です。
大事なプリントや親に渡さなければいけない書類をなくしてしまうことも頻繁にあり、親から責められることが多くありました。
「机上を片付けなさい」、「だらしないから物をなくすのだ」と。
しかし、よく家の状況を思い出してみると、リビングや台所など親が利用する場所も物であふれていたのです。
きっと私の親も整理整頓が苦手だったのでしょう。
そのせいで部屋が汚かったり、散らかっているのが当たり前になり、自分の部屋が物であふれていても何とも思いませんでした。
それなのに自分だけ責められるのは違和感がありましたし、そもそも片付け方が全く分かりませんでした。
ADHDの子供は整理整頓を教えるには、まず家の中がきれいの片付いていなければいけません。
リビングや台所など、家族がよく利用する場所が整頓されていることで、視覚的にきれいな状態が当たり前になり、自主的な清掃行動にもつながります。
子供に整理整頓を教える前に、まず家の中が常に整頓されている状態にしてほしかったです。
⑤できないことを責めずに、できることに着目して欲しい
私は字を書くことが苦手で、学習障害(LD)の一種と言われています。
ノートに書いてある字は読めないほど汚く、親からよく怒られていました。
しかし、どう頑張っても字をきれいに書くことができないのです。
きれいに書こうと思うほど、手に力が入り、余計に変な文字になってしまいます。
また、きれいに書くことばかり意識してしまい、黒板を写せなかったり、勉強内容に集中できなくなってしまいました。
「そんな字では大人になってから恥ずかしい」
と言われていたため、字を見られるのを怖がり、文字を書くのを避けるようにもなりました。
発達障害(ADHDやLD)の子供はどう頑張ってもできないことが存在します。
しかし、全てができないわけではありません。
私の場合、数学、英語が得意で好きでしたが、字が汚いせいで、好きな教科も嫌いになってしまいました。
あと運動神経が良かったため体育も好きでしたが、「体育なんてどうでもいい」と言われ、ほめてくれることはありませんでした。
できないことを責めることは自己肯定感を下げ、子供の自信を奪います。
できることに着目し、そこを伸ばしてあげた方が将来的にも役に立つと断言できます。
私は大人になった今でも字はかなり汚いですが、何の問題もありません。
それより自分の得意なことを突き詰め、周りから認めてもらう方がよっぽど大切です。
親にできることは、子供にポジティブなフィードバックを行い、自信を高めてあげることです。
そうすれば自然と好きなことを見つけ、集中力も高まりますから。
自分の得意な部分を認めて、ほめてほしかったと今になって感じます。
⑥抽象的な言葉を使わず、より具体的なやり方を一緒に考えて欲しい
「部屋をきれいにしなさい」「字をきれいに書きなさい」のような言い方ではどのように改善したらいいか全くわかりません。
気持ちの問題だけでは改善しないのが発達障害です。
改善してほしい事項があるなら、抽象的な言葉は使わず、より具体的な言葉で教えてほしかったです。
子供によってできない理由は様々なので、正解は一つではありません。
でも、子供の様子をしっかり観察していれば、具体的な解決策は見えてくるはずです。
また、親からの一方通行のやり方ではなく、子供と親の共同作業で解決策を見つけていけば、子供も納得して受け入れられるはずです。
⑦感情的に怒った後はフォローして欲しい
間違ったことを教えるために怒るという行為は必要かもしれません。
また、親だって人間ですから、感情的になってしまうのは仕方のないことだと思います。
しかし、私の親の場合、怒ったことを翌日以降も引きずるような性格をしていました。
例えば夜に強く怒られたとしたら、次に日の朝も不機嫌、学校から帰った後も不機嫌と長いこと怒った状態が続いていました。
空気が重く、息が詰まるような気持だったのを覚えています。
少し前に子育てのドキュメンタリー番組を見ていて、子供が親に「さっきは怒りすぎてごめんね」と声掛けしているのをみて、衝撃を受けました。
親が子どもに謝ることがあるのだと。
私は親から謝罪を受けた記憶がありません。
感情的になってしまった後に、何かしらのフォローがあれば子供は安心します。
謝罪でなくても、ポジティブな声掛けや素早い気持ちの切り替えがあるだけでも、子供の精神的負担は減ると思います。
なるべく感情的に怒ってほしくないですが、怒った後は必ず何かしらのフォローが必要です。
叱るとその後のフォローはワンセットで考えましょう。
⑧親もストレスなく生活して欲しい
私も今では結婚し、子供の親となりました。
子供が自分の思い通りにならなかったり、親の考えを理解してもらえないと感情的になってしまう気持ちもよくわかります。
でも、子供に強く当たってしまうときって、自分が何かしらの問題を抱えている場合が多くないですか?
仕事がうまくいっていない、夫婦関係がうまくいっていない、経済的に困窮しているなど、何らかのストレスを抱えている可能性があります。
子供はそのような事情を関係なしにわがままを言ってきますから余計に親は追い詰められてしまいます。
でも、親の心にストレスがない状態なら、たいていにことは感情的にならずに対処できます。
発達障害の子の特性を認め、許していくためには、まず親自身が自分を認め、許す必要があります。
もしかしたら親にも発達障害の特性があるかも知れません。
何かしらのコンプレックスや問題を抱えているかもしれません。
親だって様々な葛藤を抱えて生きているのです。
そのような葛藤を癒さなければ、発達障害の子供と穏やかに接することはできません。
私の親も発達障害に似た特性を持っており、様々なことにうまくいっていなかったのでしょう。
そのような状態では子供に強く当たってしまうのも仕方ありません。
でもごくまれにすごく優しい時があり、その時の親は大好きで、ずっとそのままでいてほしいと思っていました。
子供との接し方を考える前に、親自身のストレスを減らす工夫を見つけることが重要かもしれません。
親の心の平穏さは、子供の心の平和につながり、子供は親の幸せも願っています。
まとめ
発達障害(ADHD)の僕が親にして欲しかったことをまとめます。
①発達障害について正しく理解して欲しい
②自分の将来が不安になるようなことは言わないで欲しい
③ありのままを認めて欲しい
④家の中を綺麗に整頓して欲しい
⑤できないことを責めずに、できることに着目して欲しい
⑥抽象的な言葉を使わず、より具体的なやり方を一緒に考えて欲しい
⑦感情的に怒った後はフォローして欲しい
⑧親もストレスなく生活して欲しい
です。
今回は子供のころの記憶を頼りに、子供目線で書いた文章になります。
子育てはきれい事だけでは乗り越えられない場面がたくさんありますが、何か一つでも子供との接し方で参考になるものがあれば嬉しいです。
発達障害というのは親の育て方や本人の性格の問題ではありません。
親と子供の両者が幸せな未来を共同作業で描いていく頃ができれば、子供の二次障害の発症を防げるかもしれませんね。